2011/7/18

環境・通信・その他

船舶燃料の硫黄含有率、国際基準に沿って上限引き下げへ

この記事の要約

欧州委員会は15日、船舶から排出される大気汚染物質に対する規制強化策を発表した。EU海域を航行する船舶が使用する燃料の硫黄含有率の上限を大幅に引き下げ、酸性雨による環境被害や呼吸器疾患などの健康被害を引き起こす二酸化硫黄 […]

欧州委員会は15日、船舶から排出される大気汚染物質に対する規制強化策を発表した。EU海域を航行する船舶が使用する燃料の硫黄含有率の上限を大幅に引き下げ、酸性雨による環境被害や呼吸器疾患などの健康被害を引き起こす二酸化硫黄と粒子状物質の排出量を2020年までにそれぞれ90%、80%削減するという内容。欧州委は2013年までに大気汚染防止対策の抜本的な見直しを行うことになっているが、自動車をはじめとする陸上の排出源と比べて海事セクターは取り組みが遅れている現状を踏まえ、新戦略に先行して規制強化に向けた議論を本格化させる。

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船舶からの大気汚染物質は、国際海事機関(IMO)が定める「船舶由来の汚染防止のための国際条約(MARPOL条約)」の附属書Ⅵに基づいて国際的な規制が行われている。1997年に採択された附属書Ⅵの柱は、船舶が使用する重油燃料の硫黄含有率に世界共通の上限を設けることが柱の1つで、規制海域(バルト海および北海と英仏海峡)を航行する船舶については燃料油中の硫黄含有率を1.5%未満とし、それ以外の一般海域については4.5%を上限とするという内容。EUでもこれに沿って同様の規制が導入されたが、IMOが08年に船舶燃料に対する規制を強化するMARPOL条約の改正案を採択したのを受け、硫黄含有率の上限を大幅に引き下げる。

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新規制によると、バルト海および北海と英仏海峡を航行する船舶が使用できる重油燃料の硫黄含有率は、現在の1.5%未満から15年1月までに0.1%未満に制限される。それ以外の一般海域については含有率の上限が現在の4.5%から20年までに0.5%まで引き下げられる。また、硫黄含有率の低い燃料が調達できない場合などを考慮して、排ガス中の二酸化硫黄を低減する装置を船舶に搭載することが代替手段として認められる。欧州委は新たな規制の導入には26-110億ユーロの費用がかかるものの、健康被害が減ることによるメリットは150-340億ユーロに上ると試算している。

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