2011/8/22

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏が信用不安対策で奔走、仏など空売り禁止・「経済政府」創設も

この記事の要約

ユーロ圏が信用不安拡大を阻止するため、あわただしい動きをみせている。フランスなど4カ国は12日、フランス国債格下げの噂が広がり、金融市場が動揺したことを受けて、一部株式を対象に投機的な空売りを禁止する措置を発動。仏独は1 […]

ユーロ圏が信用不安拡大を阻止するため、あわただしい動きをみせている。フランスなど4カ国は12日、フランス国債格下げの噂が広がり、金融市場が動揺したことを受けて、一部株式を対象に投機的な空売りを禁止する措置を発動。仏独は16日に緊急首脳会談を行い、ユーロ圏17カ国が財政強化に向けて「経済政府」を創設することなどを提唱した。

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空売り禁止のきっかけとなったのは、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)など大手格付け会社が米国に続いてフランス国債の格付けを最高評価の「トリプルA」から格下げするとの噂。フランス政府は昨年の財政赤字が国内総生産(GDP)比7.1%と、EUの財政規律で定められた上限の3%を超過しているものの、2013年までに改善する計画であることを強調し、財政危機を否定した。しかし市場は敏感に反応し、噂が広がった9日の株式市場では金融株を中心に売りが殺到し、主要株価は5%以上も値下がりした。

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これを受けて仏サルコジ大統領は10日に休暇先から急きょ帰国し、対応策を協議。主要銀行、保険など11銘柄を対象に、株式を実際に保有せずに売り注文を出す投機的な空売りを12日から15日間にわたって禁止することを決めた。市場の動揺が波及したイタリア、スペイン、ベルギーも同調し、同様の措置を12日に導入した。

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ユーロ圏ではドイツが昨年5月、ギリシャに端を発したユーロ圏の信用不安は国債などの投機的な取引によって助長されているとして、国内で取引されるユーロ圏の国債やCDS、国内の一部株式の空売り禁止措置を導入。EUにとって寝耳に水の単独行動で、ユーロ圏内の市場に大きな動揺を与えた経緯がある。今回は4カ国が足並みをそろえ、EU各国の証券監視当局の調整機関である欧州証券監督機構(ESMA)と調整したうえで、同機構を通じて空売り禁止を発表した。

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EUでは株式や国債の空売りなど投機性が高い取引の統一規制導入を検討しているが、貸し株など現物手当てが一切ない空売りの禁止をめぐって加盟国側と欧州議会が対立しており、成立まで時間がかかる見込みだ。このため4カ国は緊急措置として独自の禁止に踏み切った。これに先立って、ギリシャは9日に空売りを2カ月間禁止する措置を導入済み。

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一方、サルコジ大統領と独メルケル首相が提唱した「経済政府」は、ユーロ圏17カ国の首脳が年2回集まって、財政政策などについて協議するという内容。当面の議長として、EUのファンロンパイ大統領(首脳会議常任議長)を指名した。

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このほか両首脳は、ユーロ圏各国の財政規律強化に向けて、各国が来年半ばまでに財政均衡の義務化を憲法で規定することや、税収増に向けたEU共通の金融取引税導入、法人税の調和も提唱した。

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一部では今回の首脳会談で、財政危機国がドイツなどの信用力を利用して資金を調達できるようにする「ユーロ共同債」発行構想を打ち出すとの観測が出ていたが、両首脳は早期導入に否定的な見解を表明。また、財政危機に直面するユーロ参加国に緊急金融支援を行う総額4,400億ユーロの「欧州金融安定基金(EFSF)」の融資枠拡大についても、「現行枠で十分」として受け入れない意向を表明した。このため市場では失望感が広がり、一連の提案に信用不安を封じ込める効果はないとの見方が出ている。

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