2011/9/19

環境・通信・その他

精神・神経疾患の患者、欧州市民の約4割に

この記事の要約

欧州神経精神薬理学会(ENCP)はこのほど発表した報告書で、EU加盟国およびスイス、アイスランド、ノルウェーでは、精神・神経疾患を患う人が全体の約38%に当たる1億6,500万人余りに上ることを明らかにした。\ ENCP […]

欧州神経精神薬理学会(ENCP)はこのほど発表した報告書で、EU加盟国およびスイス、アイスランド、ノルウェーでは、精神・神経疾患を患う人が全体の約38%に当たる1億6,500万人余りに上ることを明らかにした。

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ENCPは不安神経症、鬱、依存症、統合失調症などの脳障害、てんかん、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経障害をはじめとする100種類ほどの疾患について約3年間にわたって調査したところ、これらの病気の患者のうち、投薬などによる治療を受けているのは全体の3分の1程度にすぎなかった。また、治療中の人でも診断が遅れるケースが多いほか、適切かつ最新の治療を受けている人はほとんどいなかった。

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精神・神経疾患の患者は病気が進行すると労働に従事できなくなることから、域内の経済的損失は数千億ユーロに達するとみられ、欧州の健康問題における21世紀最大の課題と指摘されている。病気などで失われた年数を示す「障害調整生命年数」(DALY:疾病によって失われた生命や生活の質を包括的に測定する指標)によると、身体的な障害の原因となる4大精神・神経疾患は、鬱、認知症(アルツハイマー病や血管性認知症など)、アルコール依存症と脳卒中。世界保健機関(WHO)の報告でも、精神疾患は死亡、身体的障害、経済的負担の主因となっており、なかでも鬱は2020年までに、世界の全人口において2番目に多い病気になると見込まれている。

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今回の報告書をまとめたENCPおよび独ドレスデン大学の臨床心理学・心理療法研究所の専門家らによると、各国が保健政策において精神・神経疾患が社会にもたらす多大な負担を認識し、スクリーニングなどによって潜在的な患者を早期に特定する方法を確立するとともに、早期の治療開始を優先課題とする必要がある。精神疾患は若年のうちに発症する場合が多く、病状の大幅な悪化を防ぐ唯一の効果的な方法は、早期の専門治療で身体的障害の発症を未然に防ぐことだという。

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