2011/9/26

総合 –EUウオッチャー

東欧2カ国のシェンゲン協定参加、今回も見送り

この記事の要約

EU加盟国は22日に開いた司法・内務相理事会で、加盟国などが出入国審査を廃止し、旅行者が域内をパスポートなしで移動できるようにする「シェンゲン協定」へのルーマニアとブルガリアの参加を見送ることを決めた。両国は国境管理体制 […]

EU加盟国は22日に開いた司法・内務相理事会で、加盟国などが出入国審査を廃止し、旅行者が域内をパスポートなしで移動できるようにする「シェンゲン協定」へのルーマニアとブルガリアの参加を見送ることを決めた。両国は国境管理体制の強化など参加基準を満たしているものの、オランダとフィンランドが組織犯罪対策などの不備を理由に反対し、採決にまで至らなかった。

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シェンゲン協定参加には、域外諸国から西欧への不法移民、犯罪者の流入を防ぐため、各国が域外との国境管理で十分な体制を敷くことなどが条件となっている。EUの中東欧諸国ではブルガリア、ルーマニアを除く8カ国が2007年12月に参加している。

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シェンゲン協定参加には、加盟国の全会一致での承認が必要。欧州議会は6月、両国が基準をすべて満たしたと認定したが、加盟国は同月の理事会で、汚職・組織犯罪対策が不十分で、密輸の横行、犯罪者や不法移民流入の恐れがあるとして承認を見送った経緯がある。

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今回の理事会の協議では、前回に反対に回ったドイツ、フランス、デンマークなどが賛成に転じ、25カ国が両国の協定参加を支持したが、オランダとフィンランドが反対を表明。国境管理などに関する細い規則で基準を満たしていても、汚職や組織犯罪が蔓延していては正しく運用できないという言い分だ。これに対してフランスとドイツは妥協策として、国境での出入国審査を空路と海路で10月末に廃止し、陸路については2013年夏まで先送りする案を提示.。両国の協定参加を支持するEU議長国ポーランドがオランダとフィンランドに受け入れを迫った。しかし、2カ国は反対の姿勢を変えず、ポーランドは採決を断念した。

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議長を務めたポーランドのミラー内相は、両国が協定参加の基準を満たしているにもかかわらず、2カ国が承認を拒否したことについて「約束が破られた。加盟国間の信頼を損なう悲しい事態だ」と遺憾の意を表明。ルーマニア政府は同日、オランダへの抗議として、同国産の生花の輸入を「危険な細菌が含まれている恐れがある」として禁止する措置を発動した。これに対してオランダ政府は「古いやり方の嫌がらせだ」と反発している。

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EUは10月の首脳会議で、同問題について再度協議するが、オランダは反対を撤回しないことを言明しており、ルーマニアとブルガリアのシェンゲン協定参加は少なくとも来年半ば以降に先送りされることが確実な情勢だ。

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