2011/9/26

産業・貿易

域内銀行は資本増強必要、IMFなどEUに圧力

この記事の要約

ユーロ圏の財政危機問題で揺れるEUに対して、域内銀行の資本増強を求める動きが強まっている。国際通貨基金(IMF)は21日、EUの銀行は保有するギリシャなどの国債の評価損で、2010年以降に総額2,000億ユーロの損失が生 […]

ユーロ圏の財政危機問題で揺れるEUに対して、域内銀行の資本増強を求める動きが強まっている。国際通貨基金(IMF)は21日、EUの銀行は保有するギリシャなどの国債の評価損で、2010年以降に総額2,000億ユーロの損失が生じたとする推計を発表。EUに「欧州金融安定基金(EFSF)」を活用して、銀行に資金を注入するよう促した。また、欧州システミック理事会(ESRB)」は同日、域内の金融システムが急速に悪化しているとして、同じく銀行の資本増強が必要との見解を打ち出した。

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IMFが同日公表した「世界金融安定報告書」で示した推計によると、損失2,000億ユーロのうち600億ユーロがギリシャ国債、200億ユーロがアイルランド、ポルトガルの国債、1,200億ユーロがイタリア、スペイン、ベルギーの国債の価格下落によるもの。これによる損失が大きい銀行に対する銀行間融資の信用リスクを含めた損失は3,000億ユーロに膨らむ可能性があるとしている。

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IMFは「いくつかの銀行は早急に資本レベルを引き上げる必要に迫られている」とした上で、金融市場の動向を考慮すると、市場での資金調達は不可能と指摘。まず、各国が公的資金を注入し、さらに必要なら、EUが財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う枠組みであるEFSFが各銀行を直接支援できるようにするべきだと勧告している。

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一方、EUの金融システム全体のリスクを監視するESRBは、ユーロ圏では信用不安が広がり、金融システム安定のリスクが「著しく増大している」と指摘。各国がEFSFから融資を受けて、銀行に資金を注入することを検討すべきとしている。

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EUでは、7月に結果が公表された銀行のストレステスト(健全性審査)で、スペインの貯蓄銀行、ギリシャの農業銀行など9行が「不合格」となり、年内の資本増強を指示された。これまでEUは、不合格となった9銀行以外に資本増強は不要との立場を示していたが、欧州委員会のアルムニア委員(競争政策担当)は20日、7月以降に信用不安が深刻化したことに言及し、「その後に状況が変わった」と指摘。「残念ながら、より多くの銀行が資本増強を迫られるだろう」と述べ、さらに多くの銀行で資本増強が必要になるとの見解を示しており、何らかの形で資本増強に動く可能性が強まってきたようだ。

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