欧州委員会は9月28日、EUの独自財源強化に向けた金融取引税導入を正式提案した。2014年1月から、株式取引などに0.01~0.1%の率で課税する。実現には全加盟国による承認が必要となるが、英国がEU単独での導入に強く反発しており、道のりは険しそうだ。
\欧州委のバローゾ委員長が欧州議会の本会議で発表した提案によると、金融取引税の税率は、株式・債券取引が取引額の0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引が同0.01%。金融機関の間での取引が対象となる。域外での取引でも、金融機関のどちらか一方がEUにあれば課税される。欧州委は年570億ユーロの税収を見込んでいる。
\金融取引税は、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・トービンが1970年代に提唱したもので、一般的に「トービン税」と呼ばれる。本来は投機的な取引の抑制が目的で、税収を環境対策や途上国支援などに活用することを想定しているが、欧州委は財政悪化に直面する加盟国のEU予算への負担を減らし、EUの独自財源を強化することを主眼に導入を決定。6月に発表した次期中期予算計画(対象期間:2014-20年)に盛り込んだ。
\金融取引税導入をめぐっては、主要国のドイツ、フランス、スペインやベルギー、オーストリアなどが支持している一方で、英国、オランダなどが難色を示している。世界の主要国がそろって導入しなければ、域内から投資が流出するという理由だ。とくに、欧州最大の金融センターであるシティーを抱える英国が強く反対している。
\これに対してバローゾ委員長は、リーマンショックに端を発した金融危機に際して、域内銀行が総額4兆6,000億ユーロの公的支援を受けたことに言及。「今度は金融機関が社会に貢献する番だ」として、正式提案に踏み切った。
\同案は10月17、18日のEU首脳会議で協議される。また、欧州委は他の国々と協調した形での導入も目指しており、11月初めの主要20カ国・地域(G20)首脳会議で提案する方針だ。
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