2011/10/3

産業・貿易

欧州委が11月に企業監査改革発表、共同監査や非監査業務の分離など

この記事の要約

欧州委員会は金融危機の再発防止に向けた取り組みの一環として、来月にも「ビッグ4」と呼ばれる大手会計事務所による法定監査業務の寡占状態を改善するための改革案を提示するもようだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、 […]

欧州委員会は金融危機の再発防止に向けた取り組みの一環として、来月にも「ビッグ4」と呼ばれる大手会計事務所による法定監査業務の寡占状態を改善するための改革案を提示するもようだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、改革案には複数の会計事務所による「共同監査」やローテーション制の導入、監査業務とコンサルティングなど非監査業務の分離などが盛り込まれており、大手会計事務所は収益確保に向けてビジネスモデルの転換を迫られる可能性がある。

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企業に対する法定監査ではプライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト、アーンストアンドヤング(Y&G)、KPMGの4大会計事務所が世界市場を支配している。欧州委によると、EU域内の上場企業に対する監査業務でも、これらビッグ4の占めるシェアが件数ベースで全体の70%を超え、英国の代表的な株価指数であるFTSE 100の構成銘柄ではこの割合が99%に上る。また、企業側にとっては同業他社と同じ会計事務所を使いたくない事情もあり、選択肢はほとんどないのが実情だ。

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欧州委はこうした現状を問題視し、中小の会計事務所が公正な条件で競争できる環境を整えることで、財務情報に対する投資家の信頼を高め、金融市場の安定化につなげることができると判断。昨年から監査業務における競争促進を図るための具体策について検討を進めている。

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FT紙が入手した草案によると、資産総額が10億ユーロを超える企業は2社から法定監査を受けることが義務付けられ、少なくとも1社はビッグ4以外の会計事務所でなければならない。また、会計事務所のローテーション制が導入され、1つの会計事務所が同じ企業の監査を担当できる期間は最大9年に制限される。さらに企業監査の独立性を確保するため、大手会計事務所がEU域内で法定監査と直接関係のないサービス(コンサルティングや危機管理など)を提供することは禁止される。

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法定監査業務は安定しているもののさほど成長が見込めないのに対し、コンサルティングを含む非監査業務は急速に需要が拡大しており、4大会計事務所では非監査業務が事業収益のおよそ3分の2を占めている。このため、改革案の中でもとりわけ監査業務と非監査業務の分離に対しては、業界からの強い反発が予想される。

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