2011/10/3

環境・通信・その他

航空会社への排出枠割り当て発表、無償は8割に

この記事の要約

欧州委員会は9月26日、2012年から航空業界に排出量取引制度(EU-ETS)への参加を義務付ける計画について、対象となる航空会社に12年は排出枠の85%、13-20年は82%を無償で割り当てる方針を発表した。残る排出枠 […]

欧州委員会は9月26日、2012年から航空業界に排出量取引制度(EU-ETS)への参加を義務付ける計画について、対象となる航空会社に12年は排出枠の85%、13-20年は82%を無償で割り当てる方針を発表した。残る排出枠は取引市場で購入しなければならないため、追加コストの一部は運賃値上げなどの形で利用者に負担が転嫁される可能性もある。

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EUが来年1月から導入する新ルールでは、域内の空港を発着するほぼすべてのフライトが規制の対象となり、域外の航空会社を含めた900社以上にEU-ETSに基づく排出削減が義務付けられる。初年度の12年は業界全体で04-06年の年間排出量の97%に当たる2億1,289万2,052トン、13年以降は95%に当たる2億850万2,525トン分の二酸化炭素(CO2)排出枠がスキームに参加する航空各社に割り当てられ、実際の排出量が上限を超えた場合は取引市場で排出権を購入するか、制裁金を支払わなければならない。

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航空機からのCO2排出量は域内における全排出量の3%程度だが、欧州委は新規制の導入により、20年時点で何もしなかった場合に比べて26%の排出削減を達成できると試算している。

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欧州委は航空各社に配分する排出枠の基準値を12年は輸送総量1,000トンキロ当たり0.6797アローワンス、13-20年は0.6422アローワンスに設定した。各社は割り当てられた排出枠のうち15%をオークションで取得しなければならず、13年以降については新たに規制対象となる航空会社のため、排出枠の3%が特別枠として確保される。各国政府は10年までの輸送実績に基づいて、今後3カ月以内に自国の航空会社に割り当てる無償排出枠を決定しなければならない。

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欧州委によると、排出枠の購入コストが利用者に転嫁される場合、現在の排出権価格を基にすると、たとえば欧州と米国を結ぶ大西洋路線の航空運賃は2ユーロ程度の値上げで収まる見通し。一方、無償割り当て分を含むすべての負担が運賃に転嫁された場合、値上げ幅は12ユーロ程度に膨らむと予測している。

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航空部門をEU-ETSに組み込む計画をめぐっては、EUのルールを一方的に域外の航空会社に適用するのは国際法に違反するとして、米国や中国などが反発を強めている。米国の航空会社が加盟する米航空輸送協会(ATA)は7月、EU司法裁判所に同措置の無効化を求めて提訴。同裁判所は10月6日に法務官見解を出すことになっている。

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欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は声明で「排出枠の算出ルールが確定したことで、航空会社は20年までに無償で割り当てられる排出枠を正確に把握することができ、燃料効率の改善に向けた技術開発などに資金を投入しやすくなる。国際的な合意がないため、航空業界は温室効果ガス排出削減プログラムから除外されるとの見解は支持できない」と強調。11月下旬-12月上旬に南アフリカのダーバンで開かれる国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で各国に理解を求める方針を示している。

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