2011/10/17

産業・貿易

欧州委が農業政策改革案を発表、補助金の上限設定や「緑化」柱に

この記事の要約

欧州委員会は12日、2014-20年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を発表した。対象を絞ったより公平な補助金の支給や農業と環境政策の融合などに主眼を置いた内容で、受給額に年間30万ユーロの上限を設け […]

欧州委員会は12日、2014-20年を対象期間とする次期EU共通農業政策(CAP)の改革案を発表した。対象を絞ったより公平な補助金の支給や農業と環境政策の融合などに主眼を置いた内容で、受給額に年間30万ユーロの上限を設けることや、直接支払い(所得補償)のうち30%を環境保全や気候変動への取り組みに対して支払われる「緑化に係る補助金」に充てることなどが盛り込まれている。EU加盟国と欧州議会の承認を経て実施される。

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CAPはEU予算の約4割を占める最大の支出項目で、農業者の所得を保証するための価格・所得政策や、加盟国間および地域間の経済力や生産条件などの格差を是正するための農村開発政策などに年間約600億ユーロが投じられている。巨額の財政赤字を抱える加盟国にとって農業分野への支出は大きな負担になっており、英国やスウェーデンなどは次期CAP予算を大幅に削減してその分を研究・開発費などに充てるべきだと主張していた。しかし、農業大国のフランスやスペインなどが予算の削減に強く反発。最終的により公平な補助金支給などを前提として、20年まで年間550億ユーロ規模の予算水準を維持することが決定した。

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改革案によると、CAP予算の約7割を占める直接支払いに関しては、受給額に年間30万ユーロの上限が設けられ、年間15万ユーロ以上の補助金はすべて課税対象となる。一方、気候変動への対応や環境保全につながる農法などに対する補助金は別枠で支給され、課税対象からも除外される。具体的には作物多様化、永年牧草地や生態系の維持を目的とする休閑地の維持・管理などが支給対象となる。直接支払いの対象は「実際に活動している農業者」に限られ、たとえばゴルフ場や飛行場の所有者などは除外される。

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欧州委によると、イタリアとギリシャでは1ヘクタール当たりの直接支払いが平均400ユーロに上るのに対し、ラトビアでは100ユーロに満たない。こうした加盟国間の格差を是正するため、欧州委は支払い水準が低い国を対象に段階的に支給額を引き上げ、20年までにEU平均(現時点では約270ユーロ)の少なくとも90%の達成を目指す方針を打ち出した。これにより、最大の受益国であるフランスでは14-20年に直接支払いが現在に比べて1.5%削減されるのに対し、ルーマニアの33.7%を筆頭に、ブルガリアやバルト3国などでは大幅に支給額が引き上げられる。

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