2011/10/24

産業・貿易

加盟国と欧州議会がCDS規制で合意、「裸の空売り」を禁止

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は18日、株式や国債の空売りなど投機性が高い金融取引の規制強化案ついて合意した。国家や企業の信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)について、現物手当てのない「裸の」空売りを禁止 […]

EU加盟国と欧州議会は18日、株式や国債の空売りなど投機性が高い金融取引の規制強化案ついて合意した。国家や企業の信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)について、現物手当てのない「裸の」空売りを禁止することを柱とする内容。加盟国と欧州議会による形式的な承認を経て、2012年11月1日から実施する。

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同規制案は金融危機の再発防止策の一環として、欧州委員会が昨年9月に提案したもの。ドイツが同年5月、ギリシャに端を発したユーロ圏の信用不安は国債などの投機的な取引が元凶として、国内で取引されるユーロ圏の国債やCDS、国内の一部株式の空売り禁止措置を一方的に導入し、ユーロ圏内の市場に大きな動揺を与えたことから、欧州委がEU共通の規制導入に着手することになった。

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規制案で最大の焦点となっていたのは、CDSの現物による裏付けがない「裸の空売り」。空売りは現物を保有しないまま行う取引を指すが、「裸の(Naked)空売り」では現物を保有しないだけでなく、貸し株など現物手当てが一切ない。これによって、CDSが投機目的で多用され、ユーロ圏の信用不安を招く一因となったとする反省を踏まえ、EUが規制強化に乗り出していた。

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欧州委員会が昨年9月に発表した原案では、英国など一部の加盟国が同取引の全面禁止に難色を示していることから、投資家に現物手当てが可能であることの証明を義務付けるという制限付きで認めることになっていた。これに対して欧州議会は3月、空売りを行った日のうちに現物を確保することを義務付けることで、現物手当てのないCDSの空売りを事実上禁止する修正案を採択。欧州委より厳しい姿勢を示していた。

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今回の合意では、CDSの「裸の空売り」を禁止するものの、これによって国債取引が停滞し、国債発行による資金調達が一段と困難になると主張するイタリア、スペインなどに配慮し、妥協策として各国が必要に応じて禁止措置を一時解除できるようにする「オプトアウト」条項を設けることを決めた。ただし、「オプトアウト」適用には、欧州証券監督機構(ESMA)の承認が必要。ESMAは対象国の申請に対して、禁止を解除しなければ国債市場が機能しないと判断した場合に限って認める。申請から24時間以内に判断を下す。

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このほか規制案には、株式、債券の空売りを厳しく制限することが盛り込まれた。売り持ち(ショートポジション)が一定の規模に達した投資家に対して、当局や市場に報告することを義務付ける。異常な値動きを示すなど緊急事態が生じた際は、ESMAに各国と協議した上で空売りを一時的に停止する権限が与えられる。

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