2011/10/24

産業・貿易

金融支援対象国の格付け禁止を検討、規制強化策の柱に

この記事の要約

欧州委員会は格付け会社に対する新たな規制策として、財政危機に陥りEUや国際通貨基金(IMF)などから金融支援を受けている国の信用格付けを禁止する方向で検討を進めている。欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)が20 […]

欧州委員会は格付け会社に対する新たな規制策として、財政危機に陥りEUや国際通貨基金(IMF)などから金融支援を受けている国の信用格付けを禁止する方向で検討を進めている。欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)が20日の会見で明らかにした。EUは国際的な金融支援を受けているギリシャやアイルランドなどの国債の格下げ決定が域内の財政危機を助長しているとみており、欧州委が11月にまとめる格付け会社に対する規制強化策に同措置が盛り込まれる見通し。しかし、格付け会社は金融市場に混乱を及ぼすと強く反発しており、規制強化に向けた議論は曲折が予想される。

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EUは不透明な判断基準や手順に基づく信用格付けの判断が欧州の財政危機を悪化させているとの認識に立ち、登録制を導入するなど域内で活動する格付け会社に対する規制を強化している。バルニエ委員は「体温計が原因で発熱するわけではないが、熱が誇張されないよう、適正に機能しなければかえって混乱を招く」と述べ、「適切なタイミング」で「より正確」に格付けが行われなければならないと指摘。「IMFやEUから金融支援を受けていたり、支援を受けるための交渉を行っている国については特別な配慮が必要だ。欧州委が格付けを不適当と判断した場合、一定期間、格付けを禁止あるいは停止できるようにすることを検討している」と述べた。

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格付け禁止措置の詳細は不明だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が入手した草案よると、格付けが債券市場の乱高下を招いたり、金融市場の不安定性を高めるおそれがある場合など「厳密に定義された例外的状況」に限り、欧州証券市場監督機構(ESMA)の権限で格付けの公表を禁止または停止することができる。同紙によると、規制案にはこのほかローテーション制の導入なども盛り込まれるもよう。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスの3大格付け会社による寡占状態を改善して信用格付けの透明性を高めるための措置で、金融機関などは3年以上にわたって同じ格付け会社を起用することができなくなる。

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米国の格付け会社などは、EUが域内法で域外の格付け会社の活動を規制することはできないと反発しており、格付けの公表を禁止する行為は言論・表現の自由に対する規制にあたるといった批判も出ている。ムーディーズの広報担当は「欧州委の提案は欧州債に対する投資家の信頼を損ね、クレジット市場の不安定性を高めることになる」と警告している。

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