2011/10/31

環境・通信・その他

航空会社のCO2排出規制、米下院が対抗法案可決

この記事の要約

米下院は24日の本会議で、国内の航空会社がEUの二酸化炭素(CO2)排出量取引制度(EU-ETS)に参加することを禁止する法案を賛成多数で可決した。EUが国際的な合意を得ずに域外航空会社に温室効果ガス排出規制を適用するこ […]

米下院は24日の本会議で、国内の航空会社がEUの二酸化炭素(CO2)排出量取引制度(EU-ETS)に参加することを禁止する法案を賛成多数で可決した。EUが国際的な合意を得ずに域外航空会社に温室効果ガス排出規制を適用することは国際法に違反し、主権侵害にあたるとの立場に基づく判断。法案は上院の承認と大統領の署名を経て成立する。上院ではこれまでのところ対抗法案は提出されておらず、審議の行方は不透明だが、オバマ政権はEUルールの域外適用に強く反発しており、新規制の見直しを求めてEUへの圧力を強めるものとみられる。

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EUは来年1月から航空部門をEU-ETSに組み込むことを決めており、域内の空港を発着するほぼすべての航空会社が同制度に基づく温室効果ガスの排出削減を義務づけられる。スキームに参加する航空各社は過去の実績を基に割り当てられる排出枠のうち15%を取引市場で購入することが義務づけられ、実際の排出量が上限を超えた場合は超過分の排出権を購入するか、制裁金を支払わなければならない。

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新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、EU域内だけでなく飛行ルート全体が規制の対象となる点や、制裁金が温暖化対策費ではなくEUの財源になる点などに批判が集中。米航空輸送協会(ATA)によると、米国のほか中国、インド、ロシア、ブラジル、日本など20カ国以上がEU主導の規制に反対の立場を表明している。

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下院で可決された法案は民間航空会社にEU-ETSへの参加を禁止すると同時に、それによって国内の航空会社が同スキームに基づく制裁の対象となることのないよう、関係省庁に必要な措置を講じるよう求めている。

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下院運輸・インフラ委員会のマイカ委員長は、EUルールでは「域外の空港を離陸した瞬間からEU内の空港に着陸するまでの全行程」で排出された温室効果ガスが規制の対象になり、「EUによる不当な課金だ」と強く非難。国際民間航空機関(ICAO)の加盟国は来月にもEUの新規制に対する防衛策を承認するとの見通しを示し、国際交渉を通じてEUとの通商紛争を回避しなければならないと強調した。

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今回の動きに対し、欧州委員会の報道官は「新規制は法的手続きに基づいてEU加盟国と欧州議会から承認されており、修正するつもりはない。ただし、当然ながら新ルールの実施方法に対する関係国の懸念について話し合う用意はある」とコメント。予定通りに来年1月から航空業界に対する排出規制を実施する方針を改めて強調した。

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航空部門をEU-ETSに組み込む計画をめぐっては、ATAが国内の主要航空会社と共同で、EU司法裁判所に新規制の無効化を求める訴えを起こしている。司法裁は今月初め、EU内に乗り入れる域外の航空会社への温室効果ガス排出規制の適用は国際法に違反しないとの法務官見解を明らかにしており、米国や中国などが反発を強めている。

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