2011/11/7

環境・通信・その他

EUの航空排出規制、国連機関も反対

この記事の要約

国連の国際民間航空機関(ICAO)は2日、カナダのモントリオールで総会を開き、EUが来年1月に導入する航空業界に対する温室効果ガス排出規制に反対する米国や中国などが提出した報告書を賛成多数で採択した。欧州委員会は世界的規 […]

国連の国際民間航空機関(ICAO)は2日、カナダのモントリオールで総会を開き、EUが来年1月に導入する航空業界に対する温室効果ガス排出規制に反対する米国や中国などが提出した報告書を賛成多数で採択した。欧州委員会は世界的規模で温暖化対策を進めるために必要な措置と強調し、今回の決定に遺憾の意を表明しているが、米中などは国連の専門機関であるICAOの支持を背景に、規制の撤回を求めてEUへの圧力をさらに強めるものとみられる。

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EUは来年1月から航空部門を二酸化炭素(CO2)排出量取引制度(EU-ETS)に組み込むことを決めており、域内の空港を発着するほぼすべての航空会社が同制度に基づく温室効果ガスの排出削減を義務づけられる。新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、EU域内だけでなく飛行ルート全体が規制の対象となる点や、制裁金が温暖化対策費ではなくEUの財源になる点などに批判が集中している。

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報告書は米中のほか、インド、ロシア、ブラジルなど26カ国が共同でまとめた。一方的なEUルールの域外適用を認めれば、他の国でも自国の規制を国外の航空会社に適用する動きが広がりかねず、そうなれば「無秩序状態に陥る」と警告。EU域外の航空会社を規制の対象から除外するよう強く求めている。採決ではEU域外の欧州諸国が態度を留保したものの、大多数の国が報告書を支持した。

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航空部門を排出量取引制度に組み込む計画をめぐっては、米航空輸送協会(ATA)が国内の主要航空会社と共同で、EU司法裁判所に新規制の無効化を求める訴えを起こしている。一方、米下院は10月末の本会議で、国内の航空会社がEU-ETSに参加することを禁止する法案を賛成多数で可決した。また、国際航空運送協会(IATA)はEU規制に伴う航空業界のコスト負担について、初年度の2012年は世界における11年の総利益の4分の1に相当する総額12億ユーロに上ると試算している。

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欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)はICAOの決定に先立つロイター通信とのインタビューで、域外の航空会社が「EUの排出量取引制度に匹敵する別の方法」で温室効果ガスの排出削減に取り組む場合は、EU規制の適用を除外する方針を示唆した。同委員は「EUは航空業界に対する規制制度に十分な柔軟性を持たせている」と強調し、「EU-ETSに代わる排出削減策を歓迎する」と述べた。さらに先に米下院で可決された対抗法案に関しては、「少々異様だと言わざるを得ない」と発言。EUが新規制の導入を決めたのは、航空機による温室効果ガス削減のための国際的なルール作りが暗礁に乗り上げた結果を受けたものだと説明し、EU側に国際的な紛争を巻き起こす意図はまったくないと強調した。

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