2011/11/14

総合 –EUウオッチャー

イタリアも財政危機回避へ新体制、ベルルスコーニ首相が辞任

この記事の要約

財政悪化で第2のギリシャとなることが懸念されるイタリアが、危機回避へ向けて大きく舵を切った。財政危機への対応が遅れて辞任圧力が強まっていたベルルスコーニ首相は8日、EUに約束した財政安定化の実施に向けた法案の成立後に辞任 […]

財政悪化で第2のギリシャとなることが懸念されるイタリアが、危機回避へ向けて大きく舵を切った。財政危機への対応が遅れて辞任圧力が強まっていたベルルスコーニ首相は8日、EUに約束した財政安定化の実施に向けた法案の成立後に辞任する意向を表明。これを受けて上下院は12日までに同法案を可決し、首相は同日、正式に辞任した。新首相には経済学者で欧州委員会の前委員のマリオ・モンティ氏(68)が就任する。イタリアもギリシャに続いて、新体制で危機打開を図る。

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イタリアの公的債務は国内総生産(GDP)比120%に相当する1兆9,000億ユーロで、ユーロ圏でギリシャに次ぐ水準だ。ギリシャ危機の波及に伴って信用不安が増大して国債利回りが急上昇し、国債発行による資金調達が困難な状況となっている。

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政府は財政緊縮による赤字削減を誓っているが、ベルルスコーニ政権の求心力が弱く、財政再建の先行きに対する不安が急拡大。10年物国債の利回りは7日、ユーロ導入後の最高記録を更新して6.68%まで上昇し、危険水域とされる7%に近づいた。このため、国内ではベルルスコーニ首相の辞任、政権交代を求める声が強まっていた。

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辞任の直接のきっかけとなったのは、イタリア下院で8日に実施された2010年度の予算報告に関する法案の採決。事実上の首相信任投票となった採決では、野党の棄権によって可決されたが、与党の賛成票が過半数に満たない308にとどまった。これを受けてベルルスコーニ首相はナポリターノ大統領に辞意を表明。財政安定化法案の成立後に退陣することを明らかにしていた。

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法案可決を受けて、ベルルスコーニ首相は13日、ナポリターノ大統領に辞表を提出。内閣も総辞職した。これを受けてナポリターノ大統領は同日、モンティ氏を新首相に任命。週内に組閣を終え、新政権が発足する見通しだ。

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7%の国債利回りは、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルが財政危機によってEU、国際通貨基金(IMF)への金融支援要請を迫られた際の水準。イタリアの10年物国債の利回りは9日に同水準を突破し、一時7.4%台まで上昇した。11日に財政安定化法案が上院を通過したことを受けて、利回りは同日に6.4%台まで低下した。

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同国はユーロ圏3位の経済国で、デフォルト(債務不履行)に陥った場合の影響はギリシャの比ではない。このため国内外で信用不安拡大への懸念が強まっており、4日に閉幕した主要20カ国・地域(G20)首脳会議では、イタリアはIMFによる財政再建監視の受け入れを迫られた。

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国債利回りは危険水域を脱したものの、なお高水準にあり、約束した財政再建がふらつくと再び突破するのは確実。ユーロ圏の信用不安問題は、震源地であるギリシャによる包括的な救済策の受け入れが固まったことで大きな山を越えたかにみえたが、新たにイタリアが大きな焦点となってきた。

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モンティ新首相は、各方面から非政治家の専門家を集めた実務派内閣を組織し、財政危機打開に取り組む見込み。新首相は「イタリアは非常事態に直面しているが、総力を挙げた努力で克服できる」と述べ、挙国一致で財政再建に取り組む必要性を強調した。ベルルスコーニ前首相率いる与党「自由国民」を含む主要与野党は新内閣を支えていく方針を示している。ただ、連立政権に加わっていた「北部同盟」のマローニ前内相は、新政権が財政赤字削減のため、同党の主要支持基盤である高齢者に打撃を与える年金改革を進めるとみられることから組閣に介入する姿勢を示しており、曲折も予想される。

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