2011/11/14

総合 –EUウオッチャー

ギリシャの新政権発足、パパデモス氏が首相に

この記事の要約

深刻な信用不安に陥っているギリシャで11日、欧州中央銀行(ECB)前副総裁のルカス・パパデモス氏(64)を首班とする3党連立の暫定政権が発足した。これによりギリシャは政局の混迷にとりあえず終止符を打ち、新政権の下でデフォ […]

深刻な信用不安に陥っているギリシャで11日、欧州中央銀行(ECB)前副総裁のルカス・パパデモス氏(64)を首班とする3党連立の暫定政権が発足した。これによりギリシャは政局の混迷にとりあえず終止符を打ち、新政権の下でデフォルト(債務不履行)回避に向けた取り組みを強化していくことになる。

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ギリシャではパパンドレウ前首相が5日、EUと国際通貨基金(IMF)の第2次支援策を野党が受け入れることを条件に、辞任する意向を表明。与党の全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)と最大野党・新民主主義党が6日に大連立で合意し、新首相の人選を進めていた。

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次期首相は当初、7日に決定する予定だったが、与野党の協議が難航し、ずれ込んでいた。候補にはベニゼロス財務相、ペツァルニコス国会議長などの名前が挙がっていたが、最終的にはパパデモス氏で落ち着いた。同氏が金融の専門家であるほか、どの党派にも属さない非議員で中間的な立場にあることから、連立政権の運営にふさわしいと判断されたもようだ。

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パパデモス氏は1994~2002年にギリシャ中央銀行の総裁を務めた後、ECBの副総裁に就任。昨年5月に退任していた。

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新政権にはPASOK、新民主主義党のほか、極右政党の国民正統派運動(LAOS)も参加する。同党の政権参加は1974年の軍事政権崩壊以来。

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新内閣でデフォルト回避に向けた財政再建、EUとの交渉にあたる要の財務相には、ベニゼロス財務相が留任。外相には欧州委員会の前環境担当委員だったディマス氏が就任する。

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EUとIMFはギリシャ救済のため、昨年5月に総額1,100億ユーロの融資を決定。さらに、1,000億ユーロの融資、300億ユーロの債務保証、ギリシャ国債を保有する民間銀行に対する債務の50%棒引きを盛り込んだ第2次支援も決めた。ところが、パパンドレウ前首相が10月31日、第2次支援受け入れの是非を問う国民投票を実施すると発表したことから、支援の条件として政府が約束した財政緊縮策の実行が不透明となり、EUは第1次支援に基づく第6弾融資80億ユーロの実行を凍結。7日のユーロ圏財務相会合は、同融資実行について、PASOKと新民主主義党が緊縮策の実施を書面で誓うことを条件とする方針を打ち出していた。

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ギリシャは12月15日までに追加融資を受けなければデフォルトに陥る状況にあったが、連立政権の発足により月内の融資実施が確実となり、当面の危機は回避された。

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新政権にとって次の急務となるのは、第2次支援受け入れの議会承認。これも連立3党を合わせて議会定数300議席のうち254議席を確保していることから、承認は確実だ。

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最大の難問は、EUに約束した財政再建を軌道に乗せること。これには厳しい財政緊縮に猛反発する国民の理解を得る必要がある。パパデモス氏は大統領府から次期首相に任命された後の演説で、「ギリシャは重要な岐路に立っている」とした上で、「団結と協力があれば、問題は早く解決される」と述べ、財政再建に向けた国民の協力を呼びかけた。

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