2011/11/21

産業・貿易

格付け会社の規制強化策を発表、輪番制や賠償制度導入など柱

この記事の要約

欧州委員会は15日、EU域内で活動する格付け会社に対する規制を強化する法案を発表した。格付けの手続きを厳格化して信用評価の透明性を確保するのが狙い。大手格付け会社による寡占状態を改善するための「輪番制」導入や、誤った格付 […]

欧州委員会は15日、EU域内で活動する格付け会社に対する規制を強化する法案を発表した。格付けの手続きを厳格化して信用評価の透明性を確保するのが狙い。大手格付け会社による寡占状態を改善するための「輪番制」導入や、誤った格付け情報によって損害を受けた投資家が損害賠償を請求できるようにすることなどを盛り込んだ内容だ。欧州議会とEU閣僚理事会による承認を経て導入する。

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EUはこれまでに登録制を導入するなど、域内で活動する格付け会社に対する監視を行っているが、不透明な判断基準に基づく国債の格下げなどが欧州の債務危機を悪化させているとして、欧州委が規制強化に向けた具体策を検討していた。欧州委のバルニエ委員(域内市場担当)は声明で「信用評価は債権市場に直接影響を及ぼすため、格付け会社はEU市民に対して責任を負っている。国債などの格付けがさらに市場を混乱させる事態を許すわけにはいかない。格付け会社は厳格なルールに従って透明な手続きで格付けを行い、誤った判断に対しては責任を取るべきだ」と指摘した。

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欧州委は格付けの透明性を確保するため、現在は年1回行っているEU諸国の国債の格付け見直しを6カ月ごとに行うよう求めている。また、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスの大手3社による寡占状態を改善して競争を促進するため、輪番制を導入して企業が3年以上にわたって同じ格付け会社を起用できないようにすることや、複雑な金融商品を取り扱う金融機関については複数の格付け会社に評価を依頼するよう義務付けることを提案している。

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一方、格付けの変更によって市場が混乱する事態を避けるため、格付けや格付け見通しを変更する場合は公表の1営業日前までに対象国に通知するよう求めている。現行ルールでは12時間前までに通知することが義務付けられているが、欧州委はこれを1営業日前とすることで、対象国が妥当な評価かどうかを検証して反論する時間を確保することができると説明している。

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さらに誤った格付け判断で投資家が損害を受けた場合、各国の裁判所に損害賠償請求訴訟を起こすことができる制度の導入も法案に盛り込まれた。これは今月10日、S&Pが一部の顧客にフランス国債の格下げを知らせる警告メールを誤って送信し、国債価格が一時急落した事態などを踏まえた措置。一方、バルニエ委員はEUや国際通貨基金(IMF)などから金融支援を受けている国の国債格付けを一時的に停止する権限を欧州証券市場監督機構(ESMA)に与える方針を示していたが、欧州委内部で意見が分かれて調整がつかず、引き続き検討を重ねることとした。

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