2011/11/28

総合 –EUウオッチャー

債務危機がドイツに波及、国債入札が札割れ

この記事の要約

ドイツ政府が23日実施した新発10年物国債の入札は、60億ユーロの募集に対し、金融機関による応札は6割の約36億ユーロにとどまった。ユーロ圏の中核国であり、最も財政が健全とされるドイツの国債入札で調達予定額に届かない「札 […]

ドイツ政府が23日実施した新発10年物国債の入札は、60億ユーロの募集に対し、金融機関による応札は6割の約36億ユーロにとどまった。ユーロ圏の中核国であり、最も財政が健全とされるドイツの国債入札で調達予定額に届かない「札割れ」となったことで、欧州債務危機の深刻さが浮き彫りになった格好だ。

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投資家はユーロ圏の債務危機の拡大でスペインやイタリアの国債利回りが急騰する中、安全な資金の逃避先としてドイツ国債の購入を積極的に進めてきた。その結果、ドイツ債の利回りはこのところ2%を切る水準まで低下していた。しかし23日の入札が不調に終わったことで、10年債の流通利回りは翌24日に一時2.2%弱まで上昇。約2年半ぶりに同年限の英国債の利回りと逆転した。

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ドイツのショイブレ財務相は入札結果を受け、「政府がリファイナンスに問題を抱えているということを意味するものではない」との声明を発表した。ドイツ国債の入札制度では、入札予定額に届かなかった金額分の国債はドイツ連邦銀行(中央銀行)が購入することになっているため、札割れ自体は珍しいことではない。ただ、今回のように未達額が大きいのは異例で、債務危機が今後、ユーロ圏の盟主であるドイツをも蝕み続けるのではないかと不安視する市場関係者は少なくない。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のデビッド・ビアース氏は、「ドイツ国債の利回りに上昇圧力が強まっている。我々はそろそろ認識を改める時期かもしれない」と指摘。フランス、オーストリア、オランダといった最上級の格付けを持つ国債が軒並み下落する事態となるなか、ドイツ国債だけが安全だという考えに警鐘を鳴らす。

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ユーロ圏では主要国のイタリア、スペインでも国債利回りが急上昇しており、債務危機拡大への懸念に拍車がかかっている。危機封じ込めに向けた強力な政策対応を迫る声がいっそう高まりそうだ。

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