2011/11/28

総合 –EUウオッチャー

伊・スペインの信用不安拡大、短期国債利回りがギリシャ超え

この記事の要約

ギリシャ危機が波及したユーロ圏主要国のイタリア、スペインで、信用不安が一段と深刻化している。両国は22日から25日にかけて実施した短期国債入札で、予定通りの額を調達したものの、利回りは急上昇し、ギリシャを上回る水準に達し […]

ギリシャ危機が波及したユーロ圏主要国のイタリア、スペインで、信用不安が一段と深刻化している。両国は22日から25日にかけて実施した短期国債入札で、予定通りの額を調達したものの、利回りは急上昇し、ギリシャを上回る水準に達した。政権交代によって財政再建進展への期待が高まった両国だが、市場の信頼は回復しておらず、厳しい状況に直面している。

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イタリアは25日の入札で、20億ユーロの2年物国債と80億ユーロの6カ月物国債を発行。平均落札利回りは、2年物が7.814%で、前回(10月)の4.628%から3ポイント以上も上昇。ユーロ導入後の最高記録を更新した。6カ月物の利回りは6.504%となり、前回の3.535%の2倍近くに達した。6カ月物はギリシャの4.89%を大きく上回る水準だ。これを受けて、長期金利の指標となる10年物国債の流通利回りは同日、0.34ポイント上昇し、危険水域とされる7%を超える7.3%となった。

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スペインは22日に実施した3、6カ月物国債の入札で、30億ユーロの発行枠をほぼ消化し、29億8,000万ユーロを調達した。しかし、平均落札利回りは3月物が5.11%と、前回(10月)の2.3%から急上昇。EUと国際通貨基金(IMF)から支援を受けているギリシャ、ポルトガルの水準を超えた。6カ月物も3.3%から5.227%に上昇した。

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イタリアでは先ごろベルルスコーニ政権に代わって、モンティ首相率いる新政権が発足。スペインでは20日の総選挙で中道派の最大野党・国民党が大勝し、12月に政権が交代する。両新政権とも財政危機克服に向けた財政再建の推進を誓っている。

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それにもかかわらず利回りが急上昇したのは、ユーロ圏3、4位の経済規模を持つ両国の財政が危機的状況に陥った場合、ギリシャなどと違ってEUとIMFが支えきれず、デフォルト(債務不履行)に陥るのは避けられないとの懸念がくすぶっていることが背景にある。イタリアに関しては、新内閣が実務派で固められ、与野党の政治家が入閣していないことで、財政再建に関する不透明感が漂っていることも影響しているもようだ。

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両国とも巨額の国債償還を控えているが、現行利回りで償還資金を調達し続けるのは困難。資金調達コストが膨らむことで、信用不安が一層拡大し、さらなる利回り上昇を招くという負の連鎖に直面している。欧州中央銀行(ECB)による国債買い支えや、財政危機国に対するEUの支援には限界があり、この状況を打開するには思い切った追加緊縮策の早期実施により、市場の不安を鎮めるしかない。

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欧州委員会のレーン委員(経済通貨問題担当)は25日にイタリア議会で、「最近の国債市場の動きは、ユーロ圏の信用不安の(ギリシャなど)周辺国から中核国への伝染が拡大していることを示している」と懸念を表明したうえで、イタリアの新政権が「明確で意欲的な財政再建の工程表を示す必要がある」と語った。

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