2011/12/5

総合 –EUウオッチャー

金融安定基金拡充が正式決定、目標の1兆ユーロには届かず

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は11月30日に開いた財務相会合で、ユーロ圏の財政悪化国に緊急金融支援を行う欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡充を正式決定した。ただ、実際に融資枠をどこまで拡大できるかは不透明で、目標の1兆ユーロには届 […]

ユーロ圏17カ国は11月30日に開いた財務相会合で、ユーロ圏の財政悪化国に緊急金融支援を行う欧州金融安定基金(EFSF)の規模拡充を正式決定した。ただ、実際に融資枠をどこまで拡大できるかは不透明で、目標の1兆ユーロには届かない見通し。新たにイタリアなどが支援を要請した場合に対応しきれず、信用不安解消の決定的な切り札となるには不十分なことから、安全網の一層の強化に向けて国際通貨基金(IMF)による支援の拡充を検討する。

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EFSFは現在、4,400億ユーロの融資能力を持つが、すでに支援対象となっているギリシャ、アイルランド、ポルトガルへの融資枠を除くと2,500億ユーロにとどまる。財政危機が深刻化しているイタリア、スペインが支援を求めた場合に、完全には支えきれない。このためEUは10月の首脳会議で、規模を拡充することで合意していた。

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ユーロ圏財務相会合では、規模拡充の手法として、◇ユーロ圏の国が新たに発行する国債を購入した投資家が、国債の価格下落やデフォルト(債務不履行)で損失を被った場合、EFSFが元本の20~30%を補てんする債務保証制度を設ける◇共同投資基金を設立し、域内外の官民の投資家から資金を集める――という2案の併用で合意。来年1月から実施することを決めた。債務保証は、投資家が財政悪化国の国債を購入しやすい環境を整えることで、間接的に支援能力を拡充する形となる。

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ただ、この方式では融資能力がどれだけ増強されるかは不明で、具体的な数字を示すことはできなかった。10月の首脳会議では、融資能力を4~5倍の1兆ユーロに引き上げることを目指すとしていたが、議長国ルクセンブルクのユンケル首相圏財務相は「1兆ユーロには届かないだろう」と述べた。

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英バークレイズ・キャピタルによると、ユーロ圏は2012年だけで総額約6,380億ユーロ相当の国債を償還しなければならない。しかし、利回り上昇を受けて新規国債発行による資金調達は難しい状況だ。EFSF による国債買い支えに限界がある中、EU内外では最後の砦である欧州中央銀行(ECB)が支援機能を拡大し、新規国債を買い取ることを求める声が強まっているが、ECBがユーロ圏の特定国を直接支援することは禁じられており、ドイツも難色を示している。

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このため、ユーロ圏ではIMFによる支援の拡大を模索しており、財務相会合では前提としてIMFに資金増強を求めることで一致した。ユーロ圏各国の中央銀行がIMFへの拠出を増やすことなどが検討されているもようだ。さらに、ECBがIMFに融資し、IMFが同資金を使って財政危機国を支援する“迂回支援”案も浮上している。

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EUは12月8、9日に開く首脳会議で一連の策の詳細を詰める。ブルームバーグが2日報じたところによると、IMFの資金増強については、ユーロ圏の中銀が最大2,000億ユーロを融資し、これをIMFがイタリアなど財政悪化国に融資する方向で調整が進んでいるという。

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ギリシャへの追加融資決定

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一方、同日の会合では、ギリシャに総額80億ユーロの追加融資を実施することを最終承認した。同融資は、EUとIMFが昨年5月に決めた総額1,100億ユーロの融資の第6弾。ユーロ圏財務相会合は10月に実施を決めたが、パパンドレウ首相(当時)がEUによる新たな救済の受け入れの是非を問う国民投票の実施を打ち出したことから、実行を凍結していた。

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ギリシャは12月15日までに同融資を受けなければ、デフォルトに陥ることになっていたが、最終承認によってとりあえず危機を回避できることになった。

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