2011/12/5

産業・貿易

監査法人の規制強化案発表、交代制などで寡占状態改善

この記事の要約

欧州委員会は11月30日、「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人による寡占状態を改善し、監査業務の透明性と信頼性を高めるための規制強化案を発表した。同一企業の監査を担当できる期間を最大6年とすることや、監査業務とコンサルティ […]

欧州委員会は11月30日、「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人による寡占状態を改善し、監査業務の透明性と信頼性を高めるための規制強化案を発表した。同一企業の監査を担当できる期間を最大6年とすることや、監査業務とコンサルティングなど非監査業務の分離などを柱とする内容。EU全体で会計事務所に対する監視を強化し、金融危機で明るみになった顧客企業との利益相反といった監査制度の問題点を是正する。

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企業に対する法定監査ではプライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト、アーンストアンドヤング(Y&G)、KPMGの4大監査法人が世界市場を支配している。欧州委によると、EU域内の上場企業に対する監査業務でもビッグ4の占めるシェアが大部分の国で85%を超え、英国では代表的な株価指数であるFTSE 100の構成銘柄のうち99%を4社が担っている。一方、企業側にとっては同業他社と同じ監査法人を使いたくない事情もあり、選択肢はほとんどないのが実情。欧州委はこうした現状を問題視し、昨年から監査業務における競争促進を図るための具体策について検討を進めていた。

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欧州委は規制強化に踏み切るきっかけとなった法定監査が絡む企業の不祥事として、リーマン・ブラザーズ、アングロ・アイリュッシュ銀行、オリンパスなどのケースに言及。「これらの事例は監査が適正に機能していないことを強く示唆しており、監査法人の信頼性を著しく損なっている」と指摘している。バルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「企業監査に対する投資家の信頼が揺らいでいる。現在の監査制度が抱える問題を解消して財務諸表の信用性を回復する必要がある」と強調した。

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規制案によると、監査法人が同じ顧客企業の法定監査を担当できるのは最大6年間で、再び同じ企業を担当するには少なくとも4年の「冷却期間」を置かなければならない。ただし、複数の監査法人を採用している場合は最大9年まで延長することができる。一方、上場企業は監査法人の選定にあたり、入札の実施が義務づけられる。

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監査法人と顧客企業の利益相反を防ぐため、監査法人は担当する企業にコンサルティングや危機管理など、監査業務以外のサービスを提供することが禁止される。また、ビッグ4など大手監査法人は監査部門と非監査部門の分離が義務づけられる。

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規制案にはこのほか、監査業務にEU共通の「パスポート」を導入し、域内の1カ国で資格を取得すれば、EU全域で自由に活動できる仕組みを整えることも盛り込まれた。一方、欧州委は大手監査法人による寡占状態を改善するため、大企業にビッグ4以外の中小の監査法人を含む2社から法定監査を受けることを義務づけるルールの導入を検討していたが、今回は見送られた。

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