2011/12/27

産業・貿易

専門職にEU共通の身分証、欧州委が法案発表

この記事の要約

欧州委員会は19日、専門的な資格を持つ人材のEU域内の移動を円滑にするため、EU共通の身分証を発行して職業資格を相互に認証する制度の導入を柱とする法案を発表した。国ごとに資格が異なるため専門職の移動が制限され、分野によっ […]

欧州委員会は19日、専門的な資格を持つ人材のEU域内の移動を円滑にするため、EU共通の身分証を発行して職業資格を相互に認証する制度の導入を柱とする法案を発表した。国ごとに資格が異なるため専門職の移動が制限され、分野によっては深刻な人材不足を招いている現状を改善し、EU経済の成長と競争力強化を図るのが狙い。2012年末までに欧州議会とEU加盟国の承認を得て、14年の新制度導入を目指す。

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EUは2005年に「職業資格の認証に関する指令」を制定し、専門知識を持つ人材の域内移動促進を図ってきた。しかし、現在も医師、看護師、弁護士、会計士、建築士などおよそ800の職種で国ごとに資格が異なるため、実際に域内の他の国で職に就くには資格認定のための煩雑な手続きが必要で、多くの就労機会が奪われている。欧州委は今年4月にまとめた「欧州単一市場法」の最終案で労働力の流動性確保を優先課題のひとつに挙げ、高い専門知識を持つ人材が国境を越えて活動しやすくするための具体策を検討していた。

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法案によると、加盟国間で異なる資格の相互認証を迅速化するため、専門的な資格を持つ人材に対し、本人からの求めに応じて出身国の監督当局が「欧州プロフェッショナル・カード」と呼ばれる域内共通の身分証を発行。カードを提示すれば域内のどこでも職に就いたり、事業を起こすことができる制度を導入する。また、EU市民が専門職の資格認定に関する情報にアクセスしやすくするため、加盟国は窓口を一本化して必要な情報や書類をオンラインで入手できるようにすることが求められる。さらに資格認定のための研修や検定を域内で統一し、新たに専門職に就く人の資格が自動的に他のEU諸国で認定される仕組みを導入する。一方、資格の相互認証に伴う弊害を防ぐため、各国当局は医療ミスなどを犯して免許停止や活動を禁止されている医療従事者に関する情報を他の加盟国に通知することが義務づけられる。

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