2012/1/30

産業・貿易

欧州委が英・アイルランドを提訴、天然ガス輸送網へのアクセス阻害で

この記事の要約

欧州委員会は26日、アイルランドと英国が域内における天然ガス輸送網の利用条件を定めたEU規則を順守していないとして、両国政府を欧州司法裁判所に提訴すると発表した。北アイルランドとアイルランドおよびスコットランドと北アイル […]

欧州委員会は26日、アイルランドと英国が域内における天然ガス輸送網の利用条件を定めたEU規則を順守していないとして、両国政府を欧州司法裁判所に提訴すると発表した。北アイルランドとアイルランドおよびスコットランドと北アイルランドを結ぶパイプラインへの非差別的なアクセスが確保されておらず、両国のガス市場で公正な競争が阻害されているというのが提訴の理由。司法裁がEU法違反との判断を下した場合、両国は制裁金の支払いを命じられることになる。

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EUはエネルギー分野における域内市場の創設を目指して1990年代後半から電力・ガス市場の自由化を進めており、09年7月には5つの規則と指令から成る「第3次域内エネルギー市場法令パッケージ」を採択した。このなかの1つがEUレベルのネットワーク構築を目的とした「天然ガス輸送網のアクセス条件に関する規則」で、ガス輸送網の開放や国境を越えたガス輸送網の相互接続に関する加盟国間の調整などを柱とする内容。加盟国は2011年3月までに国内法を整備して一連の規定を順守することが義務づけられていた。

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欧州委によると、北アイルランドとアイルランドを結ぶ天然ガスパイプラインに関しては、これを所有・運用するアイルランドの大手エネルギー企業が他社によるアクセスを妨害しており、このため双方のガス供給者による国境を越えたサービス提供が不可能になっている。一方、スコットランドと北アイルランドを結ぶパイプラインに関しては、ガス供給者はパイプライン運用者との間で長期契約を強いられており、こうした条件のため新規参入が著しく阻害されている。

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欧州委は以上の理由から2009年6月にアイルランドと英国に対する違反手続きを開始し、是正措置を求めてきた。両国政府は同委の警告を受け、ガス輸送網の相互接続や利用可能な容量の割当てなどについて調整を試みている。欧州委はこうした動きを歓迎しながらも、なお取り組みが不十分と判断し、法的手続きに踏み切った。

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