2012/2/6

総合 –EUウオッチャー

財政新条約で正式合意、25カ国が3月調印へ=EU首脳会議

この記事の要約

EUは1月30日にブリュッセル開いた首脳会議で、財政規律強化に向けた新条約の締結について正式合意した。同条約には加盟27カ国のうち英国、チェコを除く25カ国が参加。3月に開く首脳会議で条約に調印する。\ 新条約では、各国 […]

EUは1月30日にブリュッセル開いた首脳会議で、財政規律強化に向けた新条約の締結について正式合意した。同条約には加盟27カ国のうち英国、チェコを除く25カ国が参加。3月に開く首脳会議で条約に調印する。

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新条約では、各国は財政均衡を維持するため、財政赤字を国内総生産(GDP)比0.5%以内に抑えることを求められ、これを条約発効から1年以内に憲法や基本法に明文化しなければならない。赤字の上限は、EUの財政規律を定めた安定成長協定のGDP比3%より厳しくなる。

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赤字が同上限を超えた国は、自動的に財政改善を求められ、対応が不十分な場合は欧州司法裁判所からGDP比0.1%に相当する制裁金の支払いを命じられる。制裁金は「欧州安定メカニズム(ESM)」に積み立てられ、財政危機でEUに金融支援を要請した国への融資の財源に組み込まれる。EUの財政規律に違反した場合の制裁規定も強化され、加盟国の過半数が反対しない限り発動する。過半数の賛成がなければ発動できない安定成長協定と比べて、ほぼ自動的に制裁が科される仕組みとなる。

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新条約はユーロ圏の12カ国以上が批准した時点で発効となる。未批准国は、批准するまでESMから金融支援を受けることはできない。

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新条約制定は、ギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、昨年末のEU首脳会議で合意したもの。当初は英国だけが参加しない方針だったが、チェコも新たに不参加を表明し、両国を除く25カ国が調印することで最終合意した。

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チェコのネチャス首相は、新条約参加を見送ったことについて、「我が国に利点はない」とコメント。チェコなど非ユーロ圏の国は条約に加わってもユーロ圏17カ国の政策決定に関与できないことに加え、EU懐疑派のクラウス大統領による署名と国民投票での承認が必要となる批准手続きの先行きが不透明なことを理由に挙げた。しかし、同首相率いる市民民主党と連立政権を組む「TOP09」のシュワルツェンベルグ外相兼副首相は、首相の決定を「国益を害する」として批判し、閣僚辞任を示唆しており、チェコ政府内に大きな亀裂が生じている。

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今回の首脳会議では、ESMの創設を予定より1年前倒しして、2012年7月とすることでも正式合意した。これを受けてユーロ圏17カ国は2日、ESM 創設の条約に調印した。

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EU版の国際通貨基金(IMF)と称されるESMは、財政危機に直面するユーロ参加国に緊急金融支援を行う現行の「欧州金融安定基金(EFSF)」に代わって創設される恒常的な支援基金。融資枠は5,000億ユーロだが、財政が悪化している大国のイタリア、スペインが支援を求めた場合には対応できず、債務危機に対する市場の不安を封じ込めるには不十分との声があり、3月の首脳会議で増額を検討する見通しだ。

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このほか首脳会議では、財政悪化国の緊縮策が景気に及ぼす悪影響を抑えるため、経済成長・雇用の促進を進めることでも一致した。EUの中期予算(対象期間2007~13年)に計上されている開発援助資金の残りを失業者の職業訓練、中小企業への融資などに充当する。

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ドイツは同支援の条件として、ギリシャが予算管理権を放棄してユーロ圏に委譲することを提案していたが、フランスなど多くの国が反対し、同意を得ることはできなかった。

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