2012/2/13

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏がギリシャ第2次支援決定を先送り、新たな条件要求

この記事の要約

深刻な債務危機に陥っているギリシャのパパデモス首相は9日、連立与党がEU・国際通貨基金(IMF)による第2次支援実施の条件のひとつとなっている追加財政緊縮策で合意したと発表した。しかし、その直後に開かれたユーロ圏の財務相 […]

深刻な債務危機に陥っているギリシャのパパデモス首相は9日、連立与党がEU・国際通貨基金(IMF)による第2次支援実施の条件のひとつとなっている追加財政緊縮策で合意したと発表した。しかし、その直後に開かれたユーロ圏の財務相会合は、新たに3条件を要求し、同支援の承認を見送った。ユーロ圏はギリシャの対応を見極めた上で、15日に改めて会合を開き、支援実施の可否を判断する。

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総額1,300億ユーロの第2次支援では、ギリシャ国債を保有する銀行など民間債権者が債務の50%棒引きに応じることと並んで、ギリシャが国内総生産(GDP)比160%近くに達している政府債務を2020年までに同120%以下に削減することが条件となっている。EUとIMFは、政府がすでに打ち出した緊縮策だけでは削減目標を達成できないとして、追加措置の導入を求めていた。

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連立政権に加わる3党が協議を重ねた末にこぎ着けた合意は、追加で33億ユーロ規模の緊縮策を実施するという内容。最低賃金の22%引き下げ、公務員の1万5,000人削減、終身雇用制度の廃止、従業員解雇を厳しく制限する規制の緩和など構造改革などを盛り込んでいる。ただ、最大の焦点となっていた年金支給額の追加削減については、国民の強い反発を受けて見送った。

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ユーロ圏の財務相会合が第2次支援の承認を持ち越したのは、ギリシャが追加緊縮策を約束通り実施することへの不信感がある。昨年11月に発足した現政権が暫定的なもので、4月の総選挙で誕生する新政権が合意を順守するかどうかわからないためだ。このため同日の会合では、ギリシャ議会による追加緊縮策承認と、3与党が緊縮策実行を書面で誓約することを追加で要求。さらに、今年度予算の支出を追加で3億2,500万ユーロ削減することも求めた。この額は、年金削減で実現する予定だった緊縮額に相当するもので、具体的な代替策の決定を求めた格好となる。

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ギリシャは3月20日に145億ユーロの国債償還を控えており、それまでに第2次支援が実行されないと制御不能なデフォルト(債務不履行)に陥る。このため、追加要求に応じざるを得ず、政府は厳しい対応を迫られている。

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一方、ギリシャのベニゼロス財務相は同日、第2次支援のもうひとつの条件となっている債務減免について、民間債権者と大枠で合意し、次週に正式合意に達するとの見通しを示した。ユーロ圏は15日の財務相会合で、同問題も含めて検証し、第2次支援実施の可否を決める。

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ギリシャ議会、緊縮策を承認

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ギリシャ議会は13日未明、追加緊縮策を賛成多数で承認した。これにより第2次支援実施に向けたハードルのひとつを突破したが、国内では緊縮策に反発する市民の抗議活動が激化している。

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議会の採決では賛成199票、反対74票で関連法案が採択された。ただ、連立与党に加わる全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)と新民主主義党から約40人が造反して、反対または棄権に回り、政権内に大きな亀裂が生じた。

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2010年にギリシャ危機が表面化してから導入された緊縮策で生活苦が増している国民は、追加措置に激しく反発しており、12日には首都アテネと第2の都市テッサロニキで10万人規模の抗議活動が展開された。一部が暴徒化し、AFP通信によるとアテネ中心部では放火よって10件の建物が炎上。54人の負傷者が出た。

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また、非難の矛先が政府だけでなく、支援の見返りとして引き締めを強めるEU、IMFにも向けられており、警察労組は9日、EU、IMFが「ギリシャの民主主義、国家主権を侵害している」として、ギリシャ支援の担当者の逮捕を求める声明を出した。

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