2012/2/27

環境・通信・その他

EUが欧州裁にACTA合法性判断を要請、抗議運動の高まりが圧力に

この記事の要約

欧州委員会は22日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」について、欧州司法裁判所にEU法との整合性に関する判断を求めたことを明らかにした。\ 日本や米国などに続き、EUお […]

欧州委員会は22日、知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」について、欧州司法裁判所にEU法との整合性に関する判断を求めたことを明らかにした。

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日本や米国などに続き、EUおよび22の加盟国は1月にACTAに署名したが、欧州内ではインターネット上の自由の制限を懸念する市民団体などによる抗議運動が急速に広がり、一部の加盟国は批准手続きを凍結するなど先行きが不透明になっている。欧州委は知的財産権の執行基準を国際的に調和させるのがACTAの狙いで、既存のEUルールに変更を求めるものではないとの説明をくり返してきたが、署名に至るまでの交渉プロセスが不透明だったことも批判の的になっている点を踏まえ、ACTAの合法性について明確にする必要があると判断した。

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欧州委のデフフト委員(通商担当)は会見で、プライバシーや言論の自由といった基本的権利が制限されることへのEU市民の懸念は理解できるとしたうえで、「ソーシャルメディアなどを介して広がっている誤った情報や憶測ではなく、事実に基づいて議論されなければならない」と指摘。「知的財産権保護の国際的な基準を引き上げることがACTAの目的であり、ウェブサイトを検閲・閉鎖したり、ネット上の言論の自由を制限するものではない」と強調した。

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ACTAは知的財産の権利者やビジネスに重大な経済的損失をもたらす模倣品や海賊版の増加に歯止めをかけるため、日本と米国が2006年に提唱した構想で、昨年10月に日・米にカナダ、韓国、シンガポール、豪州、ニュージーランド、モロッコを加えた8カ国が署名。閣僚理事会の承認を経て、先月26日にはEUおよびドイツ、オランダ、エストニア、キプロス、スロバキアを除く域内22カ国が条約に署名し、欧州議会と各国議会でそれぞれ批准手続きに入ることになっている。

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しかし、違法ダウンロードやファイル共有に対する規制や取り締まりを強化する動きに対し、欧州ではネット上の自由を侵害するものだとの批判が高まり、今月11日には域内のおよそ200カ所で一斉に抗議デモが行われた。こうした動きを受け、ドイツ、ポーランド、チェコ、ルーマニア、ブルガリアなどは批准プロセスを凍結したり、批准を拒否する意向を表明。欧州議会でもEU法との整合性を疑問視する声が高まり、シュルツ議長は独メディアとのインタビューで「インターネットユーザーの権利と著作権保護の適正なバランスが取れていない」と指摘。ACTAの批准に難色を示すなど、EU内でも不協和音が鮮明になっている。

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