2012/3/5

総合 –EUウオッチャー

アイルランドの新財政条約参加、国民投票で可否判断

この記事の要約

アイルランドのケリー首相は2月28日、EUの財政規律強化に向けた新条約の批准の是非を問う国民投票を実施すると発表した。憲法の規定に基づくもので、同条約に参加する25カ国で唯一、議会での手続きではなく国民投票で承認を求める […]

アイルランドのケリー首相は2月28日、EUの財政規律強化に向けた新条約の批准の是非を問う国民投票を実施すると発表した。憲法の規定に基づくもので、同条約に参加する25カ国で唯一、議会での手続きではなく国民投票で承認を求める。

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同国ではEU関連の条約について、国民投票で批准の可否を問うことが義務付けられている。これまでに2度、EUの基本条約改定を否決した経緯がある。現行基本条約のリスボン条約をめぐって、2008年に国民投票で否決し、条約発効を大きく遅らせたのは記憶に新しい。新財政条約については、有力紙サンデー・ビジネスポストが1月に実施した世論調査で、賛成40%、反対36%、態度未定24%と支持派が優勢だが、その差はわずかで、予断を許さない状況だ。

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新財政条約はユーロ圏の12カ国以上が批准した時点で発効となるため、アイルランドが否決しても大勢に影響はない。ただ、アイルランドは条約を批准するまで、7月に創設さる「欧州安定メカニズム(ESM)」から金融支援を受けることができない。同国は財政危機により2010年末にEU、国際通貨基金(IMF)から総額675億ユーロの緊急融資を取り付けたが、同支援は13年で終了する。新たな支援が必要となった場合に困ることになる。同国は財政再建が進んでおり、上昇していた国債利回りが落ち着いているが、条約批准の否決によって追加支援の道が絶たれると、市場の不安が再燃し、利回りが上昇する恐れもある。

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国民投票の実施日は未定。政府は数週間以内に日程を固める予定だ。

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