2012/3/5

競争法

INGへの公的支援で欧州委の査定に「矛盾」、承認条件の緩和も

この記事の要約

欧州司法裁判所の一般裁判所は2日、オランダの金融・保険大手INGグループに対する公的支援をめぐり、同国政府による資金支援の規模に関する欧州委員会の解釈には矛盾があるとするING側の主張を認める判決を言い渡した。欧州委は公 […]

欧州司法裁判所の一般裁判所は2日、オランダの金融・保険大手INGグループに対する公的支援をめぐり、同国政府による資金支援の規模に関する欧州委員会の解釈には矛盾があるとするING側の主張を認める判決を言い渡した。欧州委は公的支援を承認する条件として、INGに金融部門と保険部門の完全分離やオランダの銀行子会社ウェストランドユトレヒトの売却などを求めているが、市場では今回の判決を受けて条件が一部緩和される可能性も指摘されている。

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INGは金融危機の影響で急速に経営が悪化し、2008年にオランダ政府から100億ユーロの資本注入を受けた。同グループは09年10月、13年までに保険部門や資産運用部門を分離し、事業規模を大幅に縮小して再建を目指す方針を打ち出し、欧州委は同年11月にINGに対する公的支援策を承認した。ただ、資本注入時の契約によると、INGは返済時に50%を上乗せすることで合意していたが、政府はINGが09年末までの返済を約束した50億ユーロ分について金利を年15-22%に引き下げたため、最終的にINGからの返済額はおよそ20億ユーロ圧縮された。欧州委は同措置が追加的な国家補助にあたると指摘し、公的支援を認める条件として新たにウェストランドユトレヒト銀の売却などを迫っていた。

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裁判所は判決で、欧州委はオランダ政府が新たに設定した15-22%の返済金利について、09年当時の一般的な金利水準と比べて著しく低いものだったかどうか十分な検証を行っていないと指摘。さらにINGと類似したケースについて、同委が08年の段階で合理的な返済金利の水準は「最低10%程度」と考えていた事実に触れ、オランダ政府の措置によってINGが優遇されたとする欧州委の主張には根拠がないと結論づけた。

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INGは欧州委との合意に基づき、13年末までにウェストランドユトレヒト銀のほか、欧州およびアジア市場で展開する保険事業を売却する方針を打ち出している。しかし、厳しい市場環境が続く中で期限内に売却先を見つけることは困難な情勢。このため今回の判決を受け、売却期限を延長するなどの措置が取られる可能性もある。

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一方、EU各国は金融危機後の08-10年に自国の金融機関に対して総額1兆6,000億ユーロ(域内総生産の13%に相当)の資金支援を実施した。欧州委は各国政府による公的支援策について、資産売却、事業規模の縮小、株主配当の凍結などを条件に、これまでに42件を正式承認し、23件が審査中となっている。審査中の案件にはフランス・ベルギー資本のデクシア、独バイエルン州立銀行、オーストリアのヒポグループなどが含まれており、アナリストからはこれらの銀行に対する公的支援の承認条件を決定する際、欧州委は今回の判決を考慮せざるを得なくなる、といった意見が出ている。

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