2012/3/12

総合 –EUウオッチャー

ハンガリーに第2段階の警告、新憲法・中銀機構改革めぐり

この記事の要約

ハンガリーで1月に施行された新憲法や中央銀行の機構改革に関する基本法などがEU法に抵触する恐れがあるとして、欧州委員会が同国に対する違反手続きを進めている問題で、同委は7日、ハンガリー政府に対して追加的な措置や情報提供を […]

ハンガリーで1月に施行された新憲法や中央銀行の機構改革に関する基本法などがEU法に抵触する恐れがあるとして、欧州委員会が同国に対する違反手続きを進めている問題で、同委は7日、ハンガリー政府に対して追加的な措置や情報提供を求めたことを明らかにした。2月に同国から提出された回答を分析した結果、中銀およびデータ保護当局の独立性や裁判官の定年年齢をめぐる措置について、なお懸念が残るためと説明している。ハンガリーは1カ月以内に是正策を示さなければならず、欧州委は対応が不十分な場合、欧州司法裁判所に提訴すると警告している。

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オルバン首相率いるハンガリー政府は、公共機関やメディアに対する政府の影響力拡大を図る政策を推し進めている。今年1月には司法権やデータ保護当局の独立性を脅かす内容の規定を盛り込んだ新憲法や、中銀総裁の権限縮小を柱とする中銀改革法などが相次いで施行された。EUはこれらの法律がEU法に抵触するおそれがあるとして、1月中旬に違反手続きを開始。ハンガリー政府はこれを受け、回答期限の2月17日までに関連法の修正案などを提示していた。

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欧州委は今回、裁判官と検察官の定年年齢を強制的に70歳から62歳に引き下げる規定と、データ保護当局の独立性に関する措置について、それぞれ違反手続きの第2段階となる意見付き理由書をハンガリー側に送付。さらに中銀と司法の独立性に関連して追加情報を求める2通の行政文書を併せて送付した。

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欧州委はまず、裁判官と検察官の定年年齢に関する懸念について、現行規定によると年内に274人が定年退職に追い込まれる点に言及し、同措置は正当な理由なく、特定の職業を対象に定年年齢を引き下げることを禁止したEU法に違反すると説明。ハンガリー政府は個々のケースで審議会が認めれば定年延長を可能とする修正案を提示しているが、これは個別の対応にすぎず、審議会の恣意的な判断に委ねる点にも問題があると指摘している。

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データ保護当局の独立性に関しては、1月の組織改変に伴いデータ保護監察官を6年間の任期途中で解任した点を問題視している。欧州委は同措置によってEU法が加盟国に義務づけているデータ保護当局の独立性が損なわれるおそれがあるとし、監察官が任期満了まで在職できるよう暫定措置を講じるべきだったと指摘している。

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一方、中銀の独立性に関しては、ハンガリー政府は欧州中央銀行(ECB)と協議のうえ現行法の修正案を提示しているが、欧州委は具体的にどのようなプロセスで法改正を行うかを明確にする必要があると指摘。また、中銀総裁の大幅な給与削減は財政赤字削減を目的とした公務員給与削減の一環か、それとも総裁個人をターゲットにした措置かについて説明を求めている。さらに、政府が金融政策決定を批判する内容の記者発表を組織的に行う行為は中銀の独立性を侵害するおそれがあると指摘している。

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このほか司法の独立性に関連して、裁判官の異動に関する司法委員会委員長の強力な権限を問題視すると共に、ハンガリーの司法制度全般に対して強い懸念を表明している。

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