2012/3/12

総合 –EUウオッチャー

スペインの財政赤字削減難航、EUの制裁発動も

この記事の要約

スペインの財政赤字削減が難航している。同国政府が先ごろ発表した2011年の赤字は国内総生産(GDP)比8.5%と、目標の6%を上回り、EUの財政規律を定めた安定成長協定で上限となっている同3%を大幅に超過。今年は4.4% […]

スペインの財政赤字削減が難航している。同国政府が先ごろ発表した2011年の赤字は国内総生産(GDP)比8.5%と、目標の6%を上回り、EUの財政規律を定めた安定成長協定で上限となっている同3%を大幅に超過。今年は4.4%まで圧縮することを目標としていたが、5.8%に上方修正した。EUが制裁に踏み切るかどうかが大きな焦点となりそうだ。

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スペインはEUに対して、財政赤字を2013年までにGDP比3%以下に抑えることを約束している。ラホイ首相は5日の記者会見で、「時期とペースは調整を迫られるが、最終目標に変更はない」と述べ、同公約の順守を明言。欧州委員会のバローゾ委員長も同日、「スペイン政府が約束を尊重することに疑いの余地はない」と述べた。

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EUは昨年末、ユーロ圏債務危機の反省を踏まえて安定成長協定を改定し、規律違反に対して、ほぼ自動的に制裁を発動する仕組みを整えた。欧州委はスペインが4月に提出する今年度予算案を検証した上で、過剰赤字の是正が不十分と判断すれば、制裁を加盟国に勧告することになる。

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すでに欧州委は、ハンガリーに財政規律違反で、約4億9,500万ユーロの補助金支給を停止するという制裁の発動を勧告している。スペインの場合はユーロ参加国であることから、GDP比最大0.5%という巨額の制裁が科せられる。

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深刻な財政不安に直面するスペインは、すでに厳しい緊縮策を実施しているが、これが景気を圧迫し、昨年10-12月期は前期比0.3%のマイナス成長に転落した。この状況で制裁を発動されるか、追加緊縮策を求められると逆効果となって債務危機が拡大する恐れがある。一方、例外扱いとして緩やかな赤字是正手続きを適用すると、財政規律強化の実効性が市場から疑われることになりかねず、欧州委は難しい判断を迫られそうだ。

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