2012/3/19

産業・貿易

金融取引税導入の協議難航、妥協策で印紙活用案が浮上

この記事の要約

EUは13日に開いた財務相理事会で域内共通の金融取引税を導入する案について協議したが、賛否両派が立場を譲らず、議論は平行線をたどった。同案成立に必要な全会一致での承認は不可能な情勢で、妥協策として印紙税による課税を拡大す […]

EUは13日に開いた財務相理事会で域内共通の金融取引税を導入する案について協議したが、賛否両派が立場を譲らず、議論は平行線をたどった。同案成立に必要な全会一致での承認は不可能な情勢で、妥協策として印紙税による課税を拡大する案が浮上している。

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一般的に「トービン税」と呼ばれる金融取引税は、本来は投機的な取引の抑制が主眼だが、EUでは財政悪化に直面する加盟国のEU予算への負担を減らし、EUの独自財源を強化することを目的としている。8月から独自の金融取引税を導入するフランスが提唱。欧州委員会が昨年9月に正式提案していた。2014年1月から株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税するという内容だ。

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EUでは、税制に関する政策決定は加盟27カ国の全会一致が必要。同案をめぐっては、欧州の金融センターである英国が強く反発しており、成立の見込みはない。ユーロ圏17カ国だけでの導入も、オランダが反対に回っているため困難な状況だ。

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同案はフランスのほかドイツ、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、フィンランド、ポルトガル、ギリシャの計9カ国が支持している。このため、加盟国のうち9カ国以上が法案などに賛同すれば、それらの国だけで先行して実施することを認めるEU基本条約の条項を活用し、同9カ国で先行導入する手もあるが、EU議長国のデンマークは「最後の手段」として後ろ向きだ。さらに、一部の国だけで導入しても実効性に欠け、金融機関が他の国に流出する恐れもある。

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そこで浮上してきたのが印紙税の活用。金融取引税反対の急先鋒である英国が、すでに証券取引に印紙税を課していることから、受け入れやすいという思惑がある。ドイツのショイブレ財務相は「(金融取引税の)合意が無理なら、他の選択肢に集中するしかない」と述べ、同案を受け入れる用意があることを表明した。

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ただ、印紙税を株式だけでなく債券、デリバティブ取引にも課すことに英国が抵抗する可能性が高く、なお先行きは不透明だ。

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