2012/3/19

産業・貿易

米のボーイング支援は協定違反、WTOが最終裁定

この記事の要約

米航空機大手ボーイングに対する米政府の資金支援が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴していた問題で、最終審に当たる上級委員会は12日、EUの主張を大筋で認める内容の報告書を公表した。ボーイングが国防総省や […]

米航空機大手ボーイングに対する米政府の資金支援が世界貿易機関(WTO)協定に違反するとしてEUが提訴していた問題で、最終審に当たる上級委員会は12日、EUの主張を大筋で認める内容の報告書を公表した。ボーイングが国防総省や米航空宇宙局(NASA)などから違法な補助金を受け取ったとするWTO紛争処理小委員会(パネル)の判断を支持した形で、EU側の勝訴が確定した。ただ、WTO上級委は昨年5月、欧州の航空機大手エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたるとする米側の訴えを認める裁定を下しており、2004年の提訴から7年以上に及んだ欧米間の通商紛争は1勝1敗の痛み分けとなった。

\

EU側は米国防総省やNASAなどがボーイングの次世代中型旅客機「787」(通称ドリームライナー)などの開発支援を行った結果、エアバスは2002-06年におよそ450億ドルの損失を被ったなどと主張していた。WTOパネルは昨年3月、ボーイングが1989-2006年に受けた少なくとも53億ドルの開発支援や、ワシントン州による30億ドル規模の優遇税制などが違法な補助金にあたるとの裁定を下したが、上級委は今回さらに、カンザス州ウィチタ市の優遇税制なども協定違反にあたると認定。ボーイングが受けた違法な補助金は最大で90億ドル超に達すると結論づけ、米側に撤回を勧告した。

\

欧州委員会は上級委の裁定について、エアバスに対するEU加盟国の資金支援は「返済すべき貸付金」であるのに対し、ボーイングに対する支援策は「払い戻し不能な資金拠出」と認定されたと指摘。デフフト委員(通商担当)は会見で「ボーイングが今日に至るまで米政府から巨額の補助金を受けているとのEU側の主張が正当と認められた」と述べ、上級委の裁定を歓迎した。一方、米通商代表部(USTR)のカーク代表は、エアバスへの補助金によってボーイングが失った契約は航空機342機分と認定されたのに対し、ボーイングへの補助金によるエアバス側の損失は118機分にすぎないと指摘。「エアバスに対する補助金の方がボーイングへの公的支援よりはるかに規模が大きいことが明確になった。上級委の裁定は米国の製造業と労働者にとって大きな勝利だ」とコメントしている。

\

米国とEUによる航空機メーカーへの資金支援が共にWTOの協定違反と判断されたことで、今後は是正勧告への対応が焦点となる。EU側は昨年12月、エアバスに対するEU加盟国の資金支援が違法な補助金にあたると結論づけた上級委の裁定を受け、同委の勧告に沿って是正措置を講じたとする報告書を提出したが、米政府はEUの対応が不十分として制裁発動も辞さない構えをみせている。一方、カークUSTR代表によると、米側はパネル報告で違法とされた補助金のうち約20億ドル分についてはすでに撤回しており、残る問題点についても「WTOの勧告に沿って是正措置を講じる」と表明している。

\