2012/4/2

総合 –EUウオッチャー

債務危機支援能力を8千億ユーロに拡大、ユーロ圏財務相会合で合意

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は3月30日に開いた財務相会合で、債務危機に陥った国に対する支援能力を8,000億ユーロに拡大することで合意した。ただ、すでに3,000億ユーロはギリシャなどへの融資が決まっていることから、新たに活用でき […]

ユーロ圏17カ国は3月30日に開いた財務相会合で、債務危機に陥った国に対する支援能力を8,000億ユーロに拡大することで合意した。ただ、すでに3,000億ユーロはギリシャなどへの融資が決まっていることから、新たに活用できるには5,000億ユーロにとどまり、市場からは今後の危機対応には不十分と受けとめられている。

\

現行の危機国支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF)」と、7月に創設される恒常的な支援基金「欧州安定メカニズム(ESM)」の現在の規模は5,000億ユーロ。これを7,000億ユーロに引き上げる。17カ国の共同声明は、すでに2国間融資とEU特別基金がギリシャに提供した1,020億ユーロを勘定に入れると、債務危機の「防火壁」は約8,000億ユーロとなるとしている。しかし、EFSFはギリシャ、アイルランド、ポルトガルに2,000億ユーロを融資することが決まっており、残る融資枠は5,000億ユーロとなる。

\

EFSFはESM創設後も1年間は存続するが、すでに決まった融資の管理に活動が限られ、新規融資は認められていなかった。しかし、財務相会合では、ESMに対するユーロ圏各国の拠出が数段階段階に分けて実施され、初年度の融資枠が2,000億ユーロにとどまることから、EFSFの残る融資枠2,400億ユーロを活用できるようにすることを決めた。ESMへの各国の拠出完了は当初、2016年半ばの予定だったが、2年前倒しして14年半ばとすることでも合意した。

\

EUの債務危機に対する金融安全網強化は、スペイン、イタリアなどが新たに支援を要請しても対応できる状況を整えるのが狙い。欧州委員会やフランスなどは当初、支援能力を9,400億ユーロまで拡大することを提案。EUと協調してギリシャなどに支援を行っている国際通貨基金(IMF)は、1兆ユーロまで引き上げるのが望ましいとしていた。

\

今回決まった安全網拡充は、これを大きく下回る規模。ドイツ、フィンランなど財政が安定している国が、他国支援の負担増加に反発する国内世論に配慮し、大幅な引き上げに難色を示したことで、市場の不安を払しょくできるだけの規模拡充には至らなかった。

\

ユーロ圏の債務危機をめぐっては、IMFがEUの要請に応じて、融資能力を最大5,000億米ドル増強することを表明している。うちEUが総額1,500億ユーロ(約2,000億ドル)を拠出、残りを他のIMF加盟国による追加拠出で確保する方針だ。

\

その実施に関しては、EUが独自の支援能力を引き上げることが前提となっていた。今回の合意で決まった増強はIMFが要求した水準を下回ったものの、IMFや米政府は、とりあえず歓迎の意を示しており、4月に加盟国の承認を得て融資拡大を正式決定する見通しだ。

\