2012/4/2

産業・貿易

「EUはエアバス支援を継続」、米がWTOに勧告不履行でパネル設置要請

この記事の要約

米通商代表部(USTR)は3月30日、欧州航空機大手エアバスに対する公的支援をめぐるEUとの通商紛争で、EUが世界貿易機関(WTO)の勧告に従わず、依然として違法な支援を継続しているとして、WTOに是正措置の履行を審査す […]

米通商代表部(USTR)は3月30日、欧州航空機大手エアバスに対する公的支援をめぐるEUとの通商紛争で、EUが世界貿易機関(WTO)の勧告に従わず、依然として違法な支援を継続しているとして、WTOに是正措置の履行を審査するパネルの設置を求めたと発表した。WTOが是正勧告を履行していないと判断した場合、米国はEUへの制裁に踏み切る可能性がある。

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WTO上級委は昨年6月、エアバスが新型航空機の開発資金として英国、フランス、ドイツ、スペイン政府から低利融資の形で不公正な補助金を受け取り、最大のライバルである米大手航空機メーカーのボーイングに深刻な打撃を与えたと認定。EUは上級委の裁定を受け、是正勧告の履行期限だった12月1日までに改善策を講じたとする報告書を提出した。しかし、米側は対応が不十分としてこれを拒否し、WTOに対して年間70-100億ドル規模に上る報復的措置の発動許可を申請したことを明らかにしていた。

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USTRは声明で、EUはWTOからエアバスに対して「180億ドルを超える不当な資金支援」を行ったと指摘されたにもかかわらず、「同社に対する支援を打ち切ったという証拠を示しておらず、実際には違法な資金支援を継続している」と主張。4月13日に開かれる紛争解決機関の会合で、是正措置の履行状況を審査するパネルの設置を正式に要請する方針を明らかにした。カーク通商代表は「エアバスに対するEUの支援は米国の航空機産業に多大な損害を与え、多くの雇用を奪った」と指摘。引き続きEU側に是正を求め、対応によっては制裁も辞さない構えをみせている。

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今回の動きについて、欧州委のクランシー報道官は「EUはWTOの勧告に沿って是正措置を講じており、米国の決定を遺憾に思う」とコメント。そのうえで、米航空機大手ボーイングに対する同国政府の支援も協定に違反すると認定したWTOの裁定に触れ、自らもWTOの勧告に従うべきだと強調している。

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