2012/4/30

環境・通信・その他

「ACTAはEU法に抵触」、欧州当局が見解

この記事の要約

知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」をめぐってEU内で議論が高まるなか、欧州データ保護監視官局(EDPS)は24日、同条約はプライバシーおよび個人情報保護の観点からEU法 […]

知的財産権の執行のための国際的な枠組みとなる「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)」をめぐってEU内で議論が高まるなか、欧州データ保護監視官局(EDPS)は24日、同条約はプライバシーおよび個人情報保護の観点からEU法に違反するとの見解を明らかにした。条約に盛り込まれたインターネット上における知的財産権侵害対策は個人の基本的権利を十分に尊重しているとはいえず、「容認しがたい悪影響」をもたらすおそれがあると警告している。

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ACTAは模倣品や海賊版の増加に歯止めをかけるため、日本と米国が2006年に提唱した構想で、昨年10月に日本、米国、カナダ、韓国、シンガポール、豪州、ニュージーランド、モロッコの8カ国が署名。今年1月にはEUおよび域内22カ国が条約に署名しており、欧州議会と各国議会でそれぞれ批准手続きが行われることになっている。しかし、EU市民の間でプライバシーや言論の自由といった基本的権利が制限されることへの懸念が広がり、欧州議会でも条約に反対する意見が大勢を占めている。こうした動きを受けて欧州委員会は4月初め、EU司法裁判所にACTAがEU法に合致しているかどうかの判断を求めるとともに、欧州議会に対して裁判所の見解が出るまで批准の承認に関する採決を見送るよう要請した。

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EDPSのブッタレッリ副監視官は意見書で「知的財産権保護のためにより一層の国際協力が必要だが、個人の基本的権利を犠牲にすることがあってはならない。権利侵害に対する措置とプライバシーや個人情報保護の適正なバランスが尊重されなければならず、この点でACTAは完全なものとはいえない」と指摘。特にネットユーザーの行動を無差別かつ広範に監視しなければならない措置はバランスを欠き、EUの基本権憲章およびデータ保護法に違反すると強調している。

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