2012/5/28

環境・通信・その他

航空排出規制でEUが譲歩示唆、「国際的な合意」で規制見直しへ

この記事の要約

EUが今年1月から導入した航空部門に対する温室効果ガス排出規制をめぐり、域外からの批判が高まっている問題で、欧州委員会の担当者は23日、EUルールに代わる国際的な合意が形成された場合、スキームを見直す方針を明らかにした。 […]

EUが今年1月から導入した航空部門に対する温室効果ガス排出規制をめぐり、域外からの批判が高まっている問題で、欧州委員会の担当者は23日、EUルールに代わる国際的な合意が形成された場合、スキームを見直す方針を明らかにした。EU側が考える譲歩の中身は不明だが、中国、インド、米国などが新たな枠組みに参加することが前提条件となり、とりわけ反対派の急先鋒に立つ中国の対応がカギを握るものとみられる。

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AP通信によると、北京で開かれたEUと中国の代表による航空関連の協議に出席した欧州委運輸総局のマシュー・ボールドウィン航空・国際運輸部長は記者団に対し、国際民間航空機関(ICAO)で航空機からの温室効果ガス排出削減のための枠組み構築に向けた本格協議が始まったことを明らかにし、「世界規模の解決策が見出された場合、EUは航空会社に適用している排出量取引制度を抜本的に見直す用意がある」と発言。国際的な合意に向けて「中国が主導的な役割を果たすことを期待する」と述べた。同氏によると、ICAOでは航空機から排出される温室効果ガスを規制する方法として、「4通りの市場メカニズム」が検討されているという。ただし、具体的にどのようなシステムかは言及を避けた。

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EUの新規制は過去の実績に基づいて域内の空港を発着する航空各社に二酸化炭素(CO2)の排出枠を設定し、実際の排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという内容。国際間の合意がないまま、域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対して批判が高まるなか、中国政府は2月、自国の航空会社がEUルールに従うことを禁止する方針を表明。航空当局は国内各社に対し、EUの規制を理由に政府の承認を得ずに運賃を引き上げることを禁止する通達を出した。さらに欧州の航空機大手エアバスは3月、中国政府の意向で同国の航空会社からのエアバス機の発注が取り消されたことを明らかにした。エアバスの親会社EADSのトップは同措置による損失額がおよそ120億ドルに上り、さらにEU規制に対する報復措置として最大25カ国から発注が取り消される可能性があると警告。新規制によってEUと域外の国との対立が深まっている現状に強い懸念を示し、EUに対して国際的な合意に基づく解決策を模索するよう強く求めていた。

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