2012/6/11

環境・通信・その他

EU-ETSベンチマークめぐる訴訟、欧州裁が鉄鋼連盟の訴え却下

この記事の要約

欧州鉄鋼メーカーの業界団体である欧州鉄鋼連盟(EUROFER)がEU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間におけるベンチマークの無効化を求めて欧州委員会を提訴している問題で、欧州法裁判所の一般裁判所は7日、排出権割り当 […]

欧州鉄鋼メーカーの業界団体である欧州鉄鋼連盟(EUROFER)がEU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間におけるベンチマークの無効化を求めて欧州委員会を提訴している問題で、欧州法裁判所の一般裁判所は7日、排出権割り当てに関する申し立ては各国の裁判所で審理すべきだとの判断を示し、EUROFERの訴えを却下した。EUROFERは声明で「裁判所の決定がベンチマークの正当性を意味するものではない」と強調し、今後は国レベルで訴訟手続きを進める方針を示している。

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EU-ETSの第1期間では全体の95%、第2期間でも90%の排出枠が対象施設に無償で割り当てられてきたが、第3期間(2013-20年)以降は段階的にオークションによる有償割り当てへの移行を進め、27年までに全面移行することが決まっている。一方、制度改正に伴う新たなコスト負担を回避するため、EU指令はより規制の緩い第3国に生産拠点を移す「カーボンリーケージ」のリスクが高いセクターを対象に、ベンチマーク方式による排出枠の無償割り当てを行う移行措置を定めている。

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ベンチマークの設定方法に関しては、域内における同一製品を製造する施設のうち、最も効率的な上位10%の排出実績の平均値となっているが、EUROFERは欧州鉄鋼業界では過去30年間にCO2削減とエネルギー効率の改善に取り組んでおり、技術的な限界に近づいていると指摘。欧州委が設定したベンチマークが適用された場合、最もCO2排出量が少ない施設でも削減目標を達成することは困難で、未達分の排出権を購入するため業界全体でおよそ50億ユーロのコスト負担が生じるなどと主張し、昨年4月、ベンチマークの無効化を求める訴えを起こした。

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EUROFERは声明で、排出枠の割当方法を定めたEU指令は国ごとにベンチマークを設定するよう規定していると指摘し、現行のベンチマークが適用された場合、カーボンリーケージのリスクを回避するという目的に反することになると強調。今後は国レベルで対象施設に割り当てられた排出枠の見直しを求め、最終的にベンチマークの引き上げにつなげたい意向を示している。

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