2012/7/2

総合 –EUウオッチャー

伊で労働市場改革法案が成立、解雇条件緩和など柱

この記事の要約

イタリアのモンティ政権が構造改革による成長力強化戦略の柱と位置づける労働市場改革法案が6月27日、下院で可決、成立した。解雇条件の緩和や若年層や女性の就労支援、失業給付制度の拡充などが主な内容で、企業競争力の強化や外国企 […]

イタリアのモンティ政権が構造改革による成長力強化戦略の柱と位置づける労働市場改革法案が6月27日、下院で可決、成立した。解雇条件の緩和や若年層や女性の就労支援、失業給付制度の拡充などが主な内容で、企業競争力の強化や外国企業の進出を促すのが狙い。モンティ首相は28日に開幕するEU首脳会議を前に、改革に取り組む姿勢をアピールする格好となった。

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労働市場改革では労働者憲章18条の改正が焦点となった。これは従業員が15人を超える企業が正当な理由なく解雇した場合、その従業員を再雇用する義務があるという規定。企業は事実上、倒産しない限り解雇ができないため企業が正規雇用を避け、外国企業の進出を阻む要因となっていると指摘されてきた。改革法は企業が業績悪化など経済的な理由で従業員を解雇することを認める一方で、労働組合からの強い圧力により、裁判所の判断による復職規定が盛り込まれた。

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モンティ首相は低迷するイタリア経済にとって労働市場改革が成長のカギであるとの認識に立ち、改革実現に向けた努力を続けてきた。しかし改革案は中道左派の民主党と労組の圧力を受けて後退を余儀なくされたうえ、失業手当拡充に絡む負担増を嫌う企業側からも反発を受け、首相の支持率は就任直後の71%から33%に急落している。

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モンティ政権の労働市場改革についてルイス大学法学部のサントーリ教授は、「成長と雇用を再び軌道に乗せる機会を逃した。(改革法案をまとめた)フォルネロ労相は魔法使いというよりはその弟子で、皆を失望させた。特に企業の落胆は大きい」と厳しい見方を示す。政府は今回、EU首脳会議の前に法案を成立させるため、可決後も修正に応じることを認めた。フォルネロ労相は、政府が応じるのは「微調整であり、大幅な修正ではない」と強調しているが、サントーリ教授は、多くの修正提案によって議会が混乱状態に陥る可能性もあると指摘している。

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