2012/7/2

総合 –EUウオッチャー

独議会が財政協定とESM設立を承認、批准は憲法裁の判断待ち

この記事の要約

ドイツ連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)は6月29日、EU諸国の財政規律を強化する「財政協定」と、財政危機に陥ったユーロ参加国に対する恒久的な金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」の設立に関する法案をそ […]

ドイツ連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)は6月29日、EU諸国の財政規律を強化する「財政協定」と、財政危機に陥ったユーロ参加国に対する恒久的な金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」の設立に関する法案をそれぞれ賛成多数で可決した。ただ、一部野党がESMの合憲性について憲法裁判所に判断を求めており、ガウク大統領は審理終了まで署名を見送る方針を示している。ESMの発足には最大の拠出国であるドイツの批准が不可欠なため、当初7月1日の設立を目指していたESMの始動が大幅に遅れる公算が大きい。

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EU版国際通貨基金(IMF)と称されるESMをめぐっては、29日のユーロ圏首脳会議でメルケル首相が銀行監督体制の強化と引き換えに、経営不振の銀行に対するESMを通じた直接資本注入を容認した点に野党の非難が集中した。首相は下院での採決に先立ち、銀行への支援は指針に沿った厳格な条件の下で行われると説明。「持続可能な方法で欧州債務危機を克服するために必要な措置であり、今回の決議はユーロ圏の連帯を内外に示す重要なメッセージになる」と述べ、野党側に理解を求めた。

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財政協定とESM設立法案の承認には上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要だが、事前協議で法案支持を表明していた野党の社会民主党(SPD)と緑の党が賛成票を投じ、圧倒的多数で可決された。ただ、野党・左派党はESMを通じてドイツの税金を南欧諸国の救済に使うことは違法と主張し、憲法裁判所に提訴している。同裁判所は6月21日の時点でESMの合憲性に関する審理には「最大3週間程度を要する」とし、ガウク大統領に設立法案への署名を見合わせるよう要請。大統領はこれに従う考えを示しており、ESMの発足は7月中旬にずれ込む可能性がある。一方、EU各国に財政赤字削減を義務づけた財政協定は、加盟国のうち英国とチェコを除く25カ国が署名している。

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