2012/7/9

産業・貿易

金融サービスの消費者保護法案発表、情報提供・助言ルールを厳格化

この記事の要約

欧州委員会は3日、金融サービス分野における消費者保護の強化を目的とする法案パッケージを発表した。透明性の欠如や不十分なリスク管理によって失われた消費者の信頼を回復するため、個人向け投資商品や保険商品を販売する際の情報提供 […]

欧州委員会は3日、金融サービス分野における消費者保護の強化を目的とする法案パッケージを発表した。透明性の欠如や不十分なリスク管理によって失われた消費者の信頼を回復するため、個人向け投資商品や保険商品を販売する際の情報提供や助言などに関するルールを厳格化して安全性を確保し、消費者が正確かつ十分な情報に基づいて金融商品を適切に選択できる条件を整える。閣僚理事会と欧州議会で法案について検討し、2015年の新ルール導入を目指す。

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EU域内における個人向け投資商品の市場規模はおよそ10兆ユーロに上る。しかし、投資商品の購入に際してリスク情報や適切な助言が十分に提供されず、自分に適さない商品を購入して大きな損害を受けるといったケースが後を絶たない。欧州委はこうした現状を改善して消費者保護を強化するため、新たに◇個人向けパッケージ型投資商品(PRIPS)に関する情報提供の義務化◇保険仲介業務指令(IMD)の改正◇投資信託に関する規制強化――の3点から成る法案パッケージを打ち出した。

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第1のPRIPSに関するルールは、銀行、保険会社、ファンドマネジャー(投資信託の運用に携わる専門家)など個人向けの投資商品を販売するすべての事業者に対し、あらゆるタイプの投資ファンド、投資を目的とする保険商品、為替や金利などを組み込んだストラクチャード商品(仕組商品)、個人年金について、「重要情報書(Key Document Document=KID)」の作成を義務づけるという内容。KIDには各商品の性格や特徴のほか、投資に伴うリスクやコストに関する詳細情報を盛り込むことが求められる。

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一方、第2のIMD指令は、あらゆるタイプの保険商品を扱う仲介業者の活動をEUレベルで統制することを目的としている。しかし、実際には国よって異なるルールが導入されているため、消費者保護レベルには大きなばらつきがある。複雑な保険商品の購入に際しては、専門的な助言が不可欠であるにもかかわらず、欧州では保険商品の70%以上が適切な助言がないまま販売されているとの調査結果もある。欧州委はこうした現状を踏まえ◇代理店やブローカーを含むすべての仲介業者に対し、保険会社が直接、保険商品を販売する場合と同じレベルの消費者保護を義務づける◇利益相反リスクを回避するため、保険商品を扱う事業者に対し、事前にステータス情報や手数料などの開示を義務づける◇保険商品の販売にあたり、専門的な立場からの助言を義務づける――などを提案している。

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第3の投資ファンド規制に関しては、あるファンドが1つの加盟国で認可を取得すれば、すべての加盟国でそのファンドの販売を認める「譲渡可能証券の集団投資事業(UCITS)指令」を拡充し、運用手法、投資対象、リスク管理、情報開示などの基準を厳格化して投資家保護を強化する。具体的には◇UCITSファンドを扱うすべての事業者に対し、業務内容と責任を明確にすることを義務づける◇過度のリスクテイクによって投資家に損害を与える事態を防ぐため、ファンドマネジャーの報酬開示を義務づける◇違反業者に対する過料の基準を域内で統一する――などが法案に盛り込まれている。

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