2012/7/16

総合 –EUウオッチャー

ESMの合憲性めぐる独訴訟が長期化、金融安全網強化が大幅ずれ込みへ

この記事の要約

ドイツ憲法裁判所で10日、債務危機に直面するユーロ参加国に対するEUの新たな緊急金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」の合憲性をめぐる訴訟の審理が始まった。審理は予想より長引く見込みで、金融安全網強化に欠 […]

ドイツ憲法裁判所で10日、債務危機に直面するユーロ参加国に対するEUの新たな緊急金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」の合憲性をめぐる訴訟の審理が始まった。審理は予想より長引く見込みで、金融安全網強化に欠かせないESMの発足が大幅に遅れる恐れが出ている。

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総額5,000億ユーロ規模のESMは、現行の危機国支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF)」を引き継ぐ恒常的な支援基金で、EU版の国際通貨基金(IMF)と称される。当初は7月1日に発足の予定だったが、EU27カ国のうちドイツ、イタリアの承認手続きが遅れ、まだ始動していない。

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ドイツでは上下両院が6月末、ESM発足を賛成多数で批准した。しかし、野党・左派党がESMを通じてドイツの税金を南欧諸国の救済に使うことは違法と主張し、憲法裁判所に提訴。同裁判所で合憲判決が出るまで大統領が関連法案への署名を見送る方針を示している。

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同国ではEFSF発足の際も合憲性が争われたが、憲法裁は合憲とする仮決定を下した上で、本格的な審理を行ったため、発足がずれ込むことはなかった。今回も同様の仮決定を早期に下すと目されていたが、憲法裁のフォスクーレ長官は10日、ESMの仕組みが複雑で「審理を極めて慎重に進めなければならない」として、判断を出すまで相当の時間がかかるとの見通しを表明した。

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これに対して独ショイブレ財務相は、ESM発足が大きく遅れることで、「ユーロ圏の信用不安問題に対する市場の不安感が増幅される」と懸念を示した。

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