2012/8/6

環境・通信・その他

米上院がEUへの対抗法案可決、航空機の温室効果ガス排出規制で

この記事の要約

米上院の商業科学運輸委員会は7月31日、EUが今年1月に導入した航空機の温室効果ガス排出規制をめぐり、運輸長官が国内の航空会社に対し、EUルールに従わないよう命じることができるとした法案を全会一致で可決した。近く本会議で […]

米上院の商業科学運輸委員会は7月31日、EUが今年1月に導入した航空機の温室効果ガス排出規制をめぐり、運輸長官が国内の航空会社に対し、EUルールに従わないよう命じることができるとした法案を全会一致で可決した。近く本会議で採決が行われ、法案が通過する見通し。下院では昨年10月、国内の航空会社がEUのスキームに参加することを禁止する法案が可決されている。最終的にオバマ大統領が法案に署名するかどうかは不明だが、政府は国際的な合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対して批判を強めており、対抗措置をちらつかせてEUに規制の見直しを迫ることが予想される。

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EUの規制は排出量取引制度(EU-ETS)に基づいて域内の空港を離着陸するすべての航空会社に二酸化炭素(CO2)の排出削減を義務づけ、達成できない場合は超過分の排出枠を購入するか、制裁金を支払うという内容。新たな規制の導入によってほとんどの航空会社が多大なコスト負担を強いられるのは確実で、米国のほか中国、インド、ロシア、ブラジル、日本など20カ国以上がEU主導の規制に反対を表明している。

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上院商業委で可決された法案は、運輸長官が公益に反すると判断した場合、国内の航空会社にEU-ETSへの参加を禁止することができるという内容。当初は同委に所属する温暖化対策推進派が法案に反対を表明していたが、事前に公聴会を開いて各方面から意見を聞くことや、国際民間航空機関(ICAO)など国際交渉の場で協議することが条件に加えられ、19人の委員全員が修正案を支持した。

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こうした中で米運輸省と国務省は8月1日までの2日間、EUの規制に反対する16カ国の航空当局者や業界団体の代表などを集めて対応策を協議。ICAOの枠組みでEUの規制に代わる国際的な取り決めを定める必要があるとの認識で一致した。

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EUの規制をめぐっては、EU域内だけでなく飛行ルート全体が規制の対象となる点や、制裁金が温暖化対策費ではなく、EUの財源になる点などに批判が集中している。中国政府は今年2月、国内の航空会社がEUルールに従うことを禁止する方針を発表。ロシアはEU国籍の航空会社に対してシベリア上空の飛行を制限する方針を示唆するなど、反対国が一致してEUへの対決姿勢を強めている。

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