2012/9/3

総合 –EUウオッチャー

ECBがユーロ圏の全銀行を監督、欧州委が近く一元化構想発表へ

この記事の要約

EU加盟国が6月の首脳会議で合意したユーロ圏17カ国の銀行監督を一元化する構想について、欧州委員会が欧州中央銀行(ECB)にユーロ圏の全銀行を監督する権限を与える方向で検討を進めていることが明らかになった。当初は金融シス […]

EU加盟国が6月の首脳会議で合意したユーロ圏17カ国の銀行監督を一元化する構想について、欧州委員会が欧州中央銀行(ECB)にユーロ圏の全銀行を監督する権限を与える方向で検討を進めていることが明らかになった。当初は金融システム全体に影響を及ぼす大手銀行のみが監督の対象になるとの見方もあったが、連鎖的に破綻が広がるリスクなどを考慮して、6,000を超えるユーロ圏内のすべての銀行を対象とする方針を固めたもようだ。実施にはEU加盟国の承認が必要だが、実現した場合、経営が悪化した銀行の救済や破綻などに関する権限は、各国の金融規制当局から全面的にECBに移ることになる。バローゾ委員長が9月12日に計画の詳細を発表する予定だ。

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南ドイツ新聞が8月30日付で欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)の話として伝えたところによると、ECBは2013年1月から欧州安定メカニズム(ESM)による公的支援を受けた銀行の監督を開始。同年7月からは金融システムに影響を及ぼす大手銀行に対象を広げ、14年1月にはユーロ圏のすべての銀行を監督下に置く。また、ユーロ圏外のEU加盟国も希望すればスキームに参加することができ、その場合は圏外に本拠を置く銀行もECBの監督対象となる。

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一方、英フィナンシャル・タイムズ(FT)などによると、ECBでは監督業務と経営不振に陥った銀行に対する融資などを行う金融業務を分離し、新たに設置する「監督委員会」が監督業務と破綻時の処理などに関する権限を持つ。監督委員会はユーロ圏17カ国の代表と独立した6人のメンバーの計23人で構成される見通しだ。

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複数のメディアがECBによる銀行監督一元化について報じたのを受け、欧州委のデリンク報道官は31日、記者団に対し「ECBは金融安定化に向けた銀行の監督権限を全面的に与えられるべきだ」と述べた。

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EU加盟国は「銀行同盟」創設に向けた第1歩として銀行監督の一元化で合意しているが、すべての権限をECBに集中させる構想についてはドイツなどが難色を示している。ショイブレ独財務相はFT紙への寄稿で、ECBが単独ですべての銀行を監督するのは不可能であり、大手行のみを監督の対象とする方がはるかに「常識的だ」と指摘している。一方、EU関係者によると、ECB内ではショイブレ財務相と同様の考えを示している当局者もいるものの、ドラギ総裁は欧州委の構想を基本的に支持しているという。

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