2012/9/3

産業・貿易

銀行賞与規制見直し、欧州議会と加盟国の溝埋まらず

この記事の要約

EUは金融危機の再発防止に向けた国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たなルールづくりの一環として、銀行報酬規制の見直しを進めているが、固定給を超える賞与(ボーナス)の支給禁止を求める欧州議会と、国際競争力の観点か […]

EUは金融危機の再発防止に向けた国際的な銀行資本規制「バーゼルⅢ」に基づく新たなルールづくりの一環として、銀行報酬規制の見直しを進めているが、固定給を超える賞与(ボーナス)の支給禁止を求める欧州議会と、国際競争力の観点から厳格な規制に難色を示す加盟国の間で調整が難航している。欧州委員会は事態の打開を図るため、妥協案として銀行株主に賞与水準に関する決定権を与える仕組みの導入を提案しているが、欧州議会はより厳格な制限を求める姿勢を崩しておらず、バーゼルⅢの段階的導入が始まる2013年1月までに関連法を制定できるかは微妙な情勢だ。

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EUは短期の業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどのリスク行動を助長し、金融危機が拡大する要因になったとして、昨年1月に各行が現金で即時支給するボーナスの割合を最大30%(高額賞与の場合は20%)に制限することなどを柱とする規制を導入した。しかし、焦点の1つだった固定給とボーナスの比率に関しては、EU共通の上限を設ける案が見送られ、現在は各行が独自に賞与の上限を設定することになっている。

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欧州議会は銀行の過剰報酬を是正するには一段と厳格な規制が必要との立場から、固定給を超えるボーナス支給の禁止を主張。これに対し、加盟国の間では、過度の報酬規制は優秀な人材の流出につながり、域内の銀行が競争力を失うことになりかねないといった意見が根強い。6月末までEU議長国を務めたデンマークは、ボーナスの上限を固定給の最大3倍(役員クラスは最大2倍)に制限し、株主の承認があればさらに上乗せが可能とする案を提示したが、欧州議会経済金融委員会はこれを拒否。欧州委のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は新たな妥協案として、固定給とボーナスの比率についてEU共通の制限は設けず、代わりに株主が上限を設定できる仕組みの導入を提案している。

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こうしたなか、ドイツのショイブレ財務相は英フィナンシャル・タイムズへの寄稿で「現金による賞与の即時支給額は固定給の範囲内でなければならない」と主張。長期的な変動報酬についても「決定に際して株主の承認を得る必要がある」と指摘している。一方、英国はボーナスの支給水準を厳しく制限した場合、結果的に固定給をつり上げることになるなどと主張。オズボーン財務相は固定給を基にした賞与の上限設定に引き続き反対する意向を示している。

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