2012/9/3

競争法

電子書籍販売でアップルなどが譲歩案、欧州委は「非公式に市場テスト」

この記事の要約

米アップルと欧米の出版大手5社が結んだ電子書籍の販売契約がEU競争法に違反する疑いがあるとして、欧州委員会が調査を進めている問題で、アップルと出版4社は欧州委の制裁を回避するため、アマゾンなどの小売業者が2年間にわたり、 […]

米アップルと欧米の出版大手5社が結んだ電子書籍の販売契約がEU競争法に違反する疑いがあるとして、欧州委員会が調査を進めている問題で、アップルと出版4社は欧州委の制裁を回避するため、アマゾンなどの小売業者が2年間にわたり、割引価格で書籍を販売できるようにする譲歩案を提示したもようだ。ロイター通信が関係者の話として報じた。欧州委は4月の時点でアップルを含む5社から和解に向けた是正策の提示があったことを明らかにしたが、具体的な内容は公表されていなかった。

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欧州委が問題にしているのは、アップルがタブレット型端末「iPad」の発売に合わせて電子書籍のオンライン配信サービス「iブックストア」を立ち上げた際に導入した「エージェンシー・モデル」と呼ばれる契約スタイル。従来は出版社が卸価格を設定し、書店が小売価格を決める「ホールセール・モデル」が一般的だったが、アップルとの契約では出版社が電子書籍の小売価格を自由に設定し、売り上げの70%を出版社、30%をアップルが受け取る仕組みになっている。エージェンシー・モデルでは小売業者に価格決定権はないが、人気作品の販売権を得るため出版社との契約で同様のモデルを採用する動きが広がっており、欧州委は電子書籍ストア間の競争が不当に妨げられているとの見方を強めている。

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競争法違反の調査対象になっている出版社は仏アシェット・リーブル(親会社はラガルデール)、米ハーパー・コリンズ(同ニューズ・コーポレーション)、米サイモン&シュスター(同CBSコーポレーション)、英ペンギン(同ピアソン・グループ)、独フェアラークグルッペ・ゲオルク・フォン・ホルツブリンク(英マクミラン・パブリッシャーズなどの親会社)。欧州委は昨年3月に電子書籍関連企業への立ち入り調査を実施するなど予備調査を進めた結果、アップルと5社の取り決めがカルテルや制限的商慣行を禁止したEU競争法に抵触するとの疑いを強め、昨年12月に本格調査を開始した。

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ロイターが関係者の話として報じたところによると、欧州委に和解に向けた譲歩案を提示したのはペンギンを除く出版4社とアップル。欧州委はライバル会社から意見を聞くなど、5社からの提案が反競争的商慣行の是正につながるかどうかについて「非公式に市場テストを進めている」という。

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電子書籍の販売契約をめぐっては、アップルと出版5社が価格設定で談合を図ったとして、米司法省が4月にニューヨーク地裁に訴訟を提起。このうちサイモン&シュスター、アシェット・リーブル、ハーパー・コリンズは司法省が提示した和解案に合意しており、すでにアマゾンなどでは3社の電子書籍が割引価格で販売されている。

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