2012/9/10

環境・通信・その他

欧州委が排出上限枠と成長率の連動を検討、排出権の供給過剰に対応

この記事の要約

欧州委員会は二酸化炭素(CO2)排出権の供給過剰による排出権価格の下落に対応するため、EU排出量取引制度(EU-ETS)における排出上限枠を経済成長率に連動させて調整する方向で検討を進めているもようだ。ブルームバーグ通信 […]

欧州委員会は二酸化炭素(CO2)排出権の供給過剰による排出権価格の下落に対応するため、EU排出量取引制度(EU-ETS)における排出上限枠を経済成長率に連動させて調整する方向で検討を進めているもようだ。ブルームバーグ通信が4日、事情に詳しい関係者の話として報じた。排出権の公正な価格形成と安定的取引を実現するための新たな選択肢として、欧州委は10月にまとめる排出権市場に関する報告書で「調整メカニズム」と呼ばれる仕組みの導入を提案する見通しという。

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EU-ETSでは第3期間がスタートする2013年以降、段階的にオークションによる排出枠の有償割当が導入され、27年までに全面移行することが決まっている。しかし、長引く景気の低迷で生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じて排出権価格は過去1年間に40%以上も下落。企業に環境投資を促すには最低でも20ユーロの排出権価格を維持する必要があるとされるが、今年4月に1トン当たり6ユーロを割り込むと史上最安値を記録した後、現在も8ユーロ台前半と引き続き低水準で推移している。

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現行制度には既に決定した排出上限枠を調整する仕組みがないため、市場ではEU-ETSが計画通りに運用された場合、排出枠の余剰分が20年時点で14億トン超に達し、少なくとも今後5年以内に排出権価格が1トン当たり15ユーロを超えることはないといった試算がある。しかし、経済状況と排出上限枠を連動させるメカニズムを導入することで大量の余剰排出枠が生じる事態を防ぎ、排出権価格を一定の水準で維持することが可能になる。

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ブルームバーグによると、欧州委が検討している選択肢には調整メカニズムの他に、取引期間の最終年に余剰排出枠を取引対象から除外する案や、2030年を達成期限とする新たな排出削減目標の設定などが含まれているという。

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