2012/9/17

競争法

露が「戦略的企業」保護強化の大統領令、EUのガスプロム調査に対抗

この記事の要約

ロシアのプーチン大統領は11日、国外で活動するエネルギー分野などの戦略的企業を対象に、他国や国際機関への情報提供や契約変更などに際して事前に政府の許可を得るよう義務付ける大統領令に署名した。欧州委員会は今月初め、競争法違 […]

ロシアのプーチン大統領は11日、国外で活動するエネルギー分野などの戦略的企業を対象に、他国や国際機関への情報提供や契約変更などに際して事前に政府の許可を得るよう義務付ける大統領令に署名した。欧州委員会は今月初め、競争法違反の疑いで国営天然ガス独占企業ガスプロムへの正式調査を開始したと発表しており、今回の動きはEUに対する事実上の対抗措置と位置付けられる。

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大統領令が適用されるのは政府が指定する戦略的企業と海外子会社など。当該企業は外国の監督当局や国際機関の対する非公開情報の提供のほか、外国企業と結んでいる契約の変更、株式譲渡、国外での不動産売却などに際し、事前に政府の許可を得なければならない。一方、大統領令には政府機関に対し、「自国の経済的利益を損なう可能性のある行為」を拒否するよう義務付ける条項も盛り込まれている。このため、欧州委はガスプロムに対する調査に必要な情報を収集することが困難になるとみられる。

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欧州委は今月4日、ガスプロムが中・東欧のガス市場での独占的地位を利用して、価格つり上げなどの不当行為に及んでいる可能性があると指摘し、正式調査に着手したことを明らかにした。同委は昨年9月に複数の国で実施した立ち入り調査などを通じ、ガスプロムがチェコ、ハンガリー、ポーランド、リトアニア、エストニア、ラトビア、ブルガリア、スロバキアで市場支配力を乱用し、ガス供給の多様化を阻害したり、原油価格に連動させる形でガス価格をつり上げているとの疑いを強めている。これに対し、ロシア側は「ガスプロムに対する調査はガス価格を引き下げるための圧力」など反論し、EUの対応を強く批判している。

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EUは天然ガス需要の25%をロシアからの輸入に頼っているが、欧州企業はここ数年、ガスプロムとの長期契約の下で天然ガスの価格が原油価格に連動して高値に設定されていることに不満を募らせており、ロシアから輸入するよりスポット市場で調達する方が得策と考えるようになっている。こうした動きを背景に、ガスプロムは1年ほど前から西欧諸国の一部顧客との間で価格交渉に応じているが、中・東欧の顧客に対しては契約変更の要請を一貫して拒否している。欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は11日、独立した天然ガスのスポット市場が創設されたことや、米国を中心にシェールガスの供給量が急速に増加している点などに触れ、「もはやガスプロムによる長期契約を正当化することはできない」と強調。同社に対する調査で競争制限的行為が確認された場合、厳しい制裁を科す姿勢を改めて示した。

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