2012/10/1

産業・貿易

EU航空業界の競争力強化策発表、アジア諸国との協定・外資規制緩和など

この記事の要約

欧州委員会は9月26日、域内に拠点を置く航空会社の国際競争力を高めて欧州経済の成長と雇用創出につなげるための新戦略を発表した。EUの航空会社は債務危機に伴う景気後退で業績が低迷し、域外のライバルとの競争で苦戦を強いられて […]

欧州委員会は9月26日、域内に拠点を置く航空会社の国際競争力を高めて欧州経済の成長と雇用創出につなげるための新戦略を発表した。EUの航空会社は債務危機に伴う景気後退で業績が低迷し、域外のライバルとの競争で苦戦を強いられている。欧州委は欧州航空業界を活性化させるため、航空輸送需要が急拡大しているアジア諸国などとの航空協定の締結や、航空会社に対する外資規制の緩和に向けた交渉に取り組む方針を示している。

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EUの航空業界は域内総生産(GDP)の2.4%に相当する3,650億ユーロの市場規模を持ち、およそ510万人が従事している。しかし、各社とも欧州危機の打撃を受けており、国際航空運送協会(IATA)によると、欧州の航空会社全体では2012年の最終損益が11億ドルの赤字(11年は5億ドルの黒字)になる見通し。また、世界の航空市場は30年まで年5%の成長が見込まれているが、域内の航空会社はアジア勢などに押されて苦戦を強いられ、国際線の市場シェアは03年の29%から25年には20%に縮小するとみられている。

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欧州委はまず、航空輸送の需要が急拡大している振興市場などにアクセスできる環境を整えることが域内の航空会社の競争力強化につながると指摘。日本、中国、インド、ASEAN諸国、ロシアなどとの間で航空協定を締結し、EUと相手国の航空会社が自由に路線を開設できるようにすることを提案している。一方、ウクライナ、トルコ、チュニジア、エジプトなど近隣諸国とは15年までに自由化交渉の妥結を目指すとしている。

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航空会社に対する外資の出資制限に関しては、大部分の国で適用されている「時代遅れの規制」によって航空会社は「新たな資金源へのアクセスを拒絶されている」と指摘。EUと米国のオープンスカイ(航空自由化)協定では依然として米側が25%、EU側は49%の出資制限が維持されている現状などを念頭に、来年3月に開催される国際民間航空機関(ICAO)の年次総会などで域外国と規制緩和に向けた協議を行う方針を示している。

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戦略案にはこのほか、域内の航空会社が公正な競争条件で事業を展開できるよう、域外の航空会社による不当な商慣行に対抗して欧州の利益を守るための新たなルールづくりを進めることも盛り込まれている。

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欧州委のカラス副委員長(運輸担当)は「EUにとって世界の航空市場で主導権を維持することは戦略的に極めて重要だ。航空業界の急速な変化にうまく対応できなければ、欧州はライバルの後塵を拝することになる」と警告。12月のEU運輸相理事会で新戦略について協議し、来年の早い時期に航空協定の交渉相手の優先リストを作成するなど、具体的な行動に着手する意向を示した。

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