2012/10/1

産業・貿易

欧州議会の経済金融委がMiFID改正案を承認、高頻度取引の規制など

この記事の要約

欧州議会の経済金融委員会は9月26日、金融市場の透明性向上を目的とする金融商品市場指令(MiFID)の改正案を全会一致で承認した。商品投機による食料価格の高騰などを背景に、欧州委員会がまとめた原案に比べてさらに一歩踏み込 […]

欧州議会の経済金融委員会は9月26日、金融市場の透明性向上を目的とする金融商品市場指令(MiFID)の改正案を全会一致で承認した。商品投機による食料価格の高騰などを背景に、欧州委員会がまとめた原案に比べてさらに一歩踏み込んだ内容になっている。早ければ10月の欧州議会本会議で採決が行われる見通し。その後、EU財務相理事会で本格的な検討に入る。

\

MiFIDは投資家による金融市場へのアクセスを促進する一方、投資家の保護を図る目的で07年11月に施行された。同指令は資本市場および投資サービスの基本法として重要な役割を果たしてきたが、規制対象が限定されているため市場の透明性が確保されておらず、これが金融危機を招く一因になったと考えられるようになった。欧州委はこうした反省に立ってMiFIDの見直しに着手し、昨年10月に現行指令の改正案(「MiFID Ⅱ」と呼ばれる)をまとめた。

\

現行指令は取引プラットフォームを「規制市場(Regulated Market)」と「多角的取引施設(Multilateral Trading Facility=MTF)」に分類し、取引情報などの開示を義務づけているが、規制市場外での取引、債権や商品デリバティブなどは規制の対象になっていない。欧州委は市場の透明性向上を目的として、規制市場やMTFで取引される株式以外の商品についても情報開示義務を課すことを提案している。また、規制市場とMTF以外の私的な取引プラットフォーム全般をカバーする「組織化された取引施設(Organised Trading Facility=OTF)」と呼ばれるカテゴリーを新たに設け、これまで規制の枠外にあったプラットフォーム上での取引を幅広く規制対象とすることも改正案の柱になっている。

\

一方、専用のプログラムを用いて1千分の1秒単位で自動的に発注を繰り返し、相場を乱高下させることが多い「高頻度取引(High Frequency Trading=HFT)」について、欧州委は新たに「アルゴリズム取引」と呼ばれるカテゴリーを設けてMiFIDの規制対象とすることを提案している。これに対し経済金融委の修正案には、すべての取引は発注から少なくとも500ミリ秒(0.5秒)が経過するまでキャンセルまたは変更できないとするルールが追加された。さらに投機筋による食料などの価格つり上げを防ぐため、商品先物市場でトレーダーが一定の時間内に持てるポジション(=未決済になっている契約総数)に上限を設けることなども修正案に盛り込まれている。

\