2012/10/15

総合 –EUウオッチャー

EU版IMF「欧州安定メカニズム」が発足、金融安全網が大幅強化

この記事の要約

債務危機に直面するユーロ参加国に対するEUの新たな緊急金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」が8日、正式に発足した。ESMは2010年に創設された現行の危機国支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF […]

債務危機に直面するユーロ参加国に対するEUの新たな緊急金融支援の枠組みとなる「欧州安定メカニズム(ESM)」が8日、正式に発足した。ESMは2010年に創設された現行の危機国支援の枠組みである「欧州金融安定基金(EFSF)」を引き継ぐ恒常的な支援基金で、融資能力は5,000億ユーロ。その発足により、EUの金融安全網が大きく強化される。

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EU版の国際通貨基金(IMF)と称されるESMは当初、7月1日に発足の予定だったが、ドイツなどの承認が難航したため、約3カ月遅れでの始動となった。資本金は7,000億ユーロ。ユーロ圏各国が拠出する払込資本金800億ユーロに加え、請求があって初めて支払われる請求払い資本および各国の保証で6,200億ユーロを確保する。融資枠を上回る資本金を用意することで、格付け機関から最高評価の格付けを取得し、債券発行による資金調達をしやすいようにする。当面は2,000億ユーロの資金で運営され、2014年半ばまでに7,000億ユーロ体制となる。また、向こう1年間はEFSFが存続するため、EUは同基金に残っている約1,500億ユーロの融資枠も活用できる。

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ESMはEFSFと同じく、債務危機が深刻化し、独自に資金調達できなくなったユーロ参加国に緊急融資を行うほか、ユーロ圏の銀行監督が一元化されることを条件に、新たに各国の銀行を直接支援できるようになる。ただし、これにはドイツ、オランダ、フィンランドが難色を示しており、今後の調整が必要だ。

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ESMをめぐっては、EFSFの支援対象となっているギリシャ、アイルランド、ポルトガルに続き、スペイン、イタリアが支援を要請する場合に備えて、資金規模の拡大が必要との声が出ており、2兆ユーロに増額するという案が浮上している。

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