2012/10/22

環境・通信・その他

バイオ燃料生産の新規制案を発表、食用植物由来燃料に5%の上限

この記事の要約

欧州委員会は17日、持続可能なバイオ燃料生産を可能にするため新たな規制案を発表した。「再生可能エネルギー利用促進指令」で規定された2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする目標を達成す […]

欧州委員会は17日、持続可能なバイオ燃料生産を可能にするため新たな規制案を発表した。「再生可能エネルギー利用促進指令」で規定された2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする目標を達成するうえで、菜種や大豆など食用植物を原料とするバイオ燃料のシェアを最大5%に制限することなどを柱とする内容。食料生産を阻害することなく温室効果ガスの削減目標を達成するため、麦わらや農産廃棄物などを原料とする「第2世代バイオ燃料」の開発を促進して持続可能なバイオ燃料生産の実現を目指す。

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EUが2009年に制定した「再生可能エネルギー指令」は、20年までに運輸部門における再生可能エネルギー比率を10%以上とする数値目標を掲げ、加盟国に目標達成を義務づけている。さらに、同指令は目標達成のために使用することができるバイオ燃料の持続可能性基準を定めており◇原料採取から製造、流通段階も含めたバイオ燃料の温室効果ガス削減率を最低35%とし、17年以降は最低削減率を50%に引き上げる◇生物多様性に富んだ土地で生産された原料の使用を禁止する――などが明記されている。

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一方、バイオ燃料の持続可能性をめぐる議論では、燃料用作物の生産に伴う間接的土地利用変化(ILUC:燃料用作物の生産によって、もともとその土地で生産されていた作物を別の土地で生産すること)の影響をどのように評価するかが焦点になっている。欧州委は2年前にまとめた報告書で、運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率10%の目標達成に際し、食用植物を原料とする従来型のバイオ燃料のシェアが5.6%以内であれば、ILUCによる二酸化炭素(CO2)の追加排出を考慮してもバイオ燃料はCO2排出削減に寄与すると結論づけている。しかし、ILUCの影響は米国とブラジルで約9割が生産されているバイオエタノールよりも、欧州が世界生産量の約5割を占めるバイオディーゼルでより顕著にみられ、ILUCを加味したバイオディーゼルの温室効果ガス排出量は通常のディーゼル燃料である軽油や重油を上回るとの試算もある。

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欧州委はこうした現状を踏まえ、第2世代バイオ燃料の実用化に向けた投資を奨励するため、食用植物を原料とする従来型のバイオ燃料の使用を制限することや、ILUCの影響を考慮してバイオ燃料の温室効果ガス排出実績を評価するなどを柱とする規制案をまとめた。具体的には◇新たに稼働を開始する設備で生産されるバイオ燃料に関しては、温室効果ガスの最低削減率を60%とする◇輸送部門で使用される再生可能エネルギーのうち、食用植物を原料とするバイオ燃料の比率を最大5%に制限する◇バイオ燃料の供給業者と加盟国に対し、ILUCの影響を踏まえたバイオ燃料の温室効果ガス排出実績に関する報告書の作成を義務づける◇食料との競合やILUCの影響を最小限に抑えて持続可能なバイオ燃料の生産を実現するため、非食用植物を原料とする次世代バイオ燃料への投資奨励策を用意する――などを提案している。

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